そのカードに書き込まない。フォーマットの提案も押さない。撮影もしない。 データの実体はまだ中に残っていることが多い。書き込みが入ると潰れる。 カードを抜いて机に置く。切り分けの手順はこの下で示す。
深夜にスマホの写真アプリを開いたら、フォルダが真っ白。慌ててSDカードを抜いてPCに挿しても、うんともすんとも言わない。子供の運動会の動画、去年の旅行の写真、下ろしたばかりの契約書のスキャン。頭の中で「終わったかも」という言葉がぐるぐる回っている。僕もサポート窓口時代、こういう電話を何十回も受けてきた。深夜1時とか2時とか、そういう時間帯にかかってくることが多かった。
結論から言うと、スマホでもPCでも認識しないという状態は、実は「まだ望みがある」ケースが多い。本当に絶望的なのは、カードの基板が焼けている、水に浸かった、物理的に割れているといった見た目に異常がある場合。今回のように「両方で反応がない」だけなら、接点の汚れや論理的な破損の可能性が高くて、自分で試せる余地はまだ残っている。
ただし最初にひとつだけ約束してほしいことがある。これ以上そのカードに書き込みをしないこと。フォーマットの提案が出ても押さない。写真を撮り直したり、別のファイルを保存したりしない。データが消えたように見えても、実際のデータはまだカードの中に眠っていることが多くて、上から書き込みが入るとその眠っているデータを踏みつぶしてしまう。ここだけは焦って動く前に一呼吸置いてほしい。
スマホとPC、両方で認識しないなら何を疑うか
まず切り分けが大事になる。スマホでは認識しないけどPCでは読めた、という場合はスマホ側のスロットやファイルシステムの相性が原因のことが多い。逆にPCでは読めるけどスマホで読めない、というパターンもよくある。
今回のように「両方でダメ」となると、原因は大きく三つに絞られる。ひとつはカードの接点が汚れている、あるいは酸化している。意外とこれが多くて、綿棒でそっと拭くだけで復活することもある。ふたつめはカード自体のコントローラーやメモリチップの物理的な劣化。長年使ったカードだと、寿命が来ていることもある。三つめはファイルシステムが壊れている論理障害。この場合は中身のデータ自体は無事なことが多い。
僕が現場でよくやったのは、別のカードリーダーで試すこと。スマホに挿していたスロットが悪いのか、カード自体が悪いのか、これで大体切り分けられる。手元に別のリーダーがなければ、家族や友人のスマホ、あるいはコンビニのマルチコピー機のスロットでも構わない。それで認識するなら、元のスマホのスロット側に問題があった可能性が高くて、カードのデータ自体は無事という希望が持てる。
PCに挿しても「認識しない」の中身を見分ける
「認識しない」と一言で言っても、実はいくつかパターンがある。
デバイスマネージャーを開いてみると分かりやすい。Windowsなら「スタート」を右クリックして「デバイスマネージャー」。ここに「不明なデバイス」やビックリマーク付きのアイコンとして表示されているなら、PC自体はカードの存在を検知はしている状態。ドライブレターが割り当てられていないだけのこともあるので、「ディスクの管理」を開いて、未割り当てのボリュームが見えるか確認してみる。ここで容量だけは正しく表示されているなら、データが残っている可能性はかなり高い。
一方、デバイスマネージャーにすら何も出てこない、挿しても何の反応もないという場合は、リーダー側の相性か、カードそのものの通電に近い部分でトラブルが起きている疑いが強くなる。USBのカードリーダー経由なら、別のUSBポートに挿し直すだけで直ることもある地味に多いパターンなので、これも試す価値はある。
このあたりの初動の考え方はSDカード認識しない時の復元方法、業者に出す前の判断基準でも詳しく書いたので、併せて見てもらえると判断がしやすいと思う。
自分で試せる範囲、無料ソフトでの復元
ディスクの管理でボリュームは見えるけどドライブレターがない、という状態なら、そこにドライブレターを割り当てるだけで普通にアクセスできることもある。試して損はない。
それでもエクスプローラーから開けない、あるいはファイルが消えて見える場合は、無料の復元ソフトを使ってみる価値がある。有名どころだとRecuvaやPhotoRecあたりが定番で、写真や動画だけを狙って復元することもできる。ただ、正直に言うと、無料ソフトの復元力にはかなり差がある。ファイル名やフォルダ構造まできれいに戻ることもあれば、ファイル名がバラバラの状態で大量に出てきて、結局中身を一つずつ確認する羽目になることもある。
このあたりの手順を丁寧に踏みたい人はSDカードの写真が消えた スマホで復元する前にやることにもう少し細かく書いてある。あと、こういう時に僕がよく紹介するのが復元専用ソフトで、Firebirdのような復旧ツールは初心者でも操作画面が分かりやすくて、まず試す一手としては悪くない選択肢だと思う。
FIREBIRD(iPhone基板修理)
水没・起動不良・リンゴループなど、iPhoneの基板レベルの故障からデータを取り出す専門サービス。他店で断られた端末の相談もできる。
FIREBIRD iPhone基板修理・データ復旧(無料相談)
修理・復旧の可否は無料相談で確認できます
ここで大事なのは、スキャンした結果は元のカードには保存しないこと。必ずPCの内蔵ドライブか別の外付けディスクに復元先を指定する。同じカードに書き戻すと、まだ拾えていないデータを上書きしてしまう危険がある。
こういうサインが出てたら、自分でいじらない方がいい
ここまで自分で試す方法を書いてきたけど、正直これは全部「カードの物理的な状態が普通に見える場合」の話。次のようなサインがあるなら、話は変わってくる。
カードを挿すたびに認識したり消えたりを繰り返す、PCが「フォーマットしますか」と何度も聞いてくる、カード自体が異様に熱くなっている、接点部分が変色していたり焦げ臭い、水に濡れた形跡がある。こういう場合は、正直言って自分でいじればいじるほど状態が悪化するリスクが高い。無料ソフトでスキャンをかけること自体が、弱っているメモリチップにさらに負荷をかけてしまうこともある。
このへんの見極めはデータ復旧が自分でできる範囲と限界、業者に切り替える基準にも書いたけど、僕の経験では「見た目が普通で反応だけがおかしい」なら自分で試す価値あり、「見た目や挙動に明らかな異常」があるなら早めに専門業者に相談する、というのが一番後悔の少ない線引きだと思っている。
業者に頼む場合の料金感と、見積もりで見ておきたいこと
自分で試してダメだった場合、あるいは物理的な異常サインがある場合、業者への相談を考えることになる。microSDのような小型メディアの復旧費用は、症状の軽さによってかなり幅がある。論理障害で軽度なら1万円台くらいから、コントローラー交換やチップ単位の解析が必要な重度の物理障害だと数万円から十数万円くらいになることもあると言われている。ここは業者や症状によって本当に差が出るので、「必ずこの値段」とは言い切れないのが正直なところで、まずは無料見積もりで実際の金額を確認するのが一番だと思う。
見積もり時に確認しておきたいのは、診断だけで料金が発生するか、成功報酬制かどうか、キャンセル時に費用がかかるかどうか。ここを曖昧にしたまま預けてしまうと、後で「思ったより高い」というトラブルになりやすい。無料診断を掲げている業者も多いので、まずは症状を伝えて見積もりを取ってみるのがいいと思う。
デジタルデータリカバリー
累計50万件超の相談実績。最短即日で無料診断でき、復旧できなければ費用がかからない成功報酬制。まず可否と概算を確認したい人向け。
初期診断・見積もりは無料
G・O・G 会員制パソコンサポート
PC・スマホ・タブレットのトラブルを電話や訪問でサポートしてくれる会員制サービス。データ以外のパソコンの困りごとが続く人向け。
全国対応/個人・法人プランあり
料金の相場感についてはもう少し詳しくデータ復旧の料金相場と高い理由、見積もりで見るべき点にまとめてあるので、業者選びで迷っている人は目を通しておくと安心材料になるはず。
写真も動画も、失って初めて重さに気づくものだと思う。僕自身、昔スマホのSDカードを一度ダメにしたことがあって、その時は幸い別リーダーで認識してくれて事なきを得たけど、あの数分間の焦りは今でも覚えている。今夜できることは、まず別のリーダーで一度試してみること。それだけでも、状況がだいぶ見えてくるはずだから。
症状が違うなら、こちらを読む
自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態
症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。
自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)
- 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
- 焦げ臭くない。煙は出ていない
- 水に濡れていない。落下させていない
- 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)
今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)
- カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
- 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
- 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
- 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
- RAID/NASでリビルドに失敗した
この状態でやってはいけない操作
- 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
- chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
- 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること
復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。
判断のもとにしている公的な情報源
このサイトについて
この記事を書いた人
真壁
データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年
メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。
