カメラの電源を入れたら「カードを挿入してください」。パソコンに挿しても「フォーマットしますか?」の表示だけ。この瞬間の焦りは、僕も窓口で何百回と聞いてきました。特に多いのが、旅行や結婚式の写真、子どもの運動会の動画が入ったカードが急に読めなくなるケース。当日中に問い合わせが来ることがほとんどです。
先に言っておくと、この状態でいちばんやってはいけないのは「何度も抜き差しする」「フォーマットしてもう一度使ってみる」ことです。認識しない=データが消えたわけではなく、多くの場合はカード内の管理領域が壊れているだけ。ここで書き込みが発生すると、直せたはずのデータが上書きされて本当に消えてしまいます。まずはそのカードを一度置いて、深呼吸してください。
認識しないSDカード、まず最初にやること
パソコンにカードリーダー経由で挿し直してみて、それでも反応がなければ別のUSBポート、別のパソコンでも試してください。ここで意外と原因が「カードリーダー側」だったというオチも結構あります。僕が受けた相談の中にも、リーダーを買い替えただけで解決した人が何人かいました。
それでもダメなら、次に見るのはWindowsの「ディスクの管理」です。スタートボタンを右クリックして「ディスクの管理」を開くと、カードが「未割り当て」や「RAW」として認識されているかどうかがわかります。ここに何かしらの表示が出ていれば、ハードウェア自体は生きている可能性が高い。逆に何も表示されない、ディスクの管理を開いても項目自体が出てこない場合は、後述する物理的な故障を疑う必要があります。
このタイミングで絶対にやってはいけないのが「クイックフォーマット」の実行。表示に従ってフォーマットしてしまうと、管理領域だけが初期化されて、写真や動画のデータ本体はしばらく残っているのに、探し出すのが格段に難しくなります。
自分で試せる復元ソフト、手順と注意点
RAW表示になっている、あるいはフォルダは見えるのに中身が空という状態なら、無料のデータ復元ソフトで救出できる可能性があります。僕が窓口時代によく案内していたのは「EaseUS Data Recovery Wizard Free」や「Recuva」あたり。どちらも無料枠でスキャンと一部復元ができます。
手順としては、まずソフトをインストールする場所に注意してください。壊れたSDカードにソフトをインストールするのは論外ですが、意外とやってしまう人がいます。必ずパソコン本体のCドライブなどにインストールして、対象ドライブとしてSDカードを選んでスキャンをかけます。
スキャンには時間がかかります。32GBのカードでも数十分、64GB以上だと1時間を超えることも普通にあります。ここで待ちきれずに中断してしまうと、認識していたファイルまで表示されなくなることがあるので、途中で電源を切ったりスリープにしたりしないでください。
スキャンが終わったら、プレビューできるファイルから優先順位をつけて復元します。無料版は復元できる容量に上限があることが多いので、まず本当に必要なファイルだけを選んで、別のドライブ(SDカード自体には戻さない)に保存する。これが鉄則です。
正直に言うと、無料ソフトでの復元成功率はケースによってかなり差があります。論理的な破損で早めに手を打てた場合は結構な確率で戻ることもありますが、破損から時間が経っていたり、何度も書き込みを試みた後だったりすると、断片的にしか復元できないこともあります。ここは「必ず戻ります」とは言えない部分で、僕も何度も「一部だけでも戻ってよかった」という声と「思ったより戻らなかった」という声、両方を聞いてきました。
こんな症状は自分でいじらず業者へ
ここからが線引きの話です。以下のような症状がある場合、僕なら自分で作業を続けることはお勧めしません。
カード内部から「カチカチ」「キュルキュル」といった異音がする、カードが異常に熱を持っている、水没や落下の後に認識しなくなった、焦げたような匂いがする――これらは基板や記憶素子そのものが物理的に壊れているサインです。SDカードは小さいのでピンとこないかもしれませんが、中には精密なチップが入っていて、素人がいじって直せるものではありません。むしろ通電を繰り返すことで、業者でも復旧できない状態まで悪化させてしまうことがあります。
僕が窓口にいた頃、水没したSDカードを自分でドライヤーで乾かして、何度も挿し直した末に業者に持ち込まれた方がいました。結果として復旧はできたのですが、担当したエンジニアいわく「あと数回抜き差ししていたら厳しかった」とのこと。乾かすなら自然乾燥、それ以上のことは触らないほうがいいです。
業者に頼む場合の費用感と選び方
業者に出す場合の料金は、症状の軽さによってかなり幅があります。論理障害(フォーマットしてしまった、認識だけしないなど)なら1万円台から3万円くらいと言われることが多いようですが、物理障害となると5万円〜15万円くらい、重度のものだとそれ以上になることもあると聞きます。あくまで目安で、実際の金額は診断してみないとわからないというのが正直なところです。
多くの業者は無料診断・無料見積もりを受け付けているので、いきなり依頼を決めずに、まず症状を伝えて見積もりだけ出してもらうのがいいと思います。僕がいつも言っているのは「複数社に同じ症状を伝えて比較する」こと。同じ症状でも見積もりの出し方や説明の丁寧さで、その業者の姿勢がなんとなく見えてきます。
デジタルデータリカバリー
累計50万件超の相談実績。最短即日で無料診断でき、復旧できなければ費用がかからない成功報酬制。まず可否と概算を確認したい人向け。
初期診断・見積もりは無料
実際に相談を受けてきて思うこと
SDカードのトラブルは、スマホやパソコンの故障よりも「気づいた時にはもう手遅れ」というケースが多い印象があります。写真の枚数が多くて、いつ撮った何が入っているか本人も把握していないことが多いからです。だからこそ、認識しないと気づいた瞬間の行動がすべてを左右します。
自分で試すにしても、無料ソフトでのスキャンは一度きりのつもりで慎重にやってほしい。何度もトライアンドエラーを繰り返すこと自体が、データを傷める原因になります。迷ったら、無料の範囲で見積もりだけでも取ってみる。それだけでも、次にどう動けばいいかが見えてくるはずです。
症状が違うなら、こちらを読む
自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態
症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。
自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)
- 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
- 焦げ臭くない。煙は出ていない
- 水に濡れていない。落下させていない
- 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)
今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)
- カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
- 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
- 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
- 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
- RAID/NASでリビルドに失敗した
この状態でやってはいけない操作
- 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
- chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
- 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること
復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。
判断のもとにしている公的な情報源
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この記事を書いた人
真壁
データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年
メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。
