夜中に業者のサイトで見積もりフォームを埋めて、返ってきた金額を見て固まった。そんな方が今これを読んでいるんじゃないかと思う。「え、HDD一台直すのに8万円?」「見積もりだけでこの金額って、本番はもっと取られるんじゃ」。僕も窓口時代、お客さんから毎日のようにこの手の電話をもらっていた。「高すぎませんか、これ」って。
先に一つだけ言っておきたい。もし今、HDDから「カチカチ」という異音がしていたり、水没・落下させた直後だったりするなら、通電を続けたり自分で分解したりするのはひとまずやめてほしい。それだけで状態が悪化して、業者に出しても復旧できなくなることがある。落ち着いて、まずは電源を切った状態で以下を読んでもらえたらと思う。
結論から言うと、データ復旧の料金は「高い」と感じて当然なくらい幅があって、しかも決して安くはない。ただ、その金額には理由がある。ぼったくりのケースもゼロではないけれど、多くは設備とリスクを考えると妥当な範囲に収まっている。このあたり、順番に整理していく。
料金相場はだいたいこのくらい
論理障害(誤削除、フォーマットミス、軽度な認識不良)なら、3万円から6万円くらいで収まることが多い。データ自体は物理的に壊れていないので、専用ソフトでの読み取りとスキャンで対応できる範囲。
物理障害(異音がする、水没した、基板が焼けた)になると話が変わる。分解して部品を交換したり、クリーンルームでプラッタを取り出したりする必要が出てくるので、10万円から、重度なものだと30万円を超えることも珍しくない。ヘッド交換やプラッタ移植が絡む案件は特に高くなりやすい。
僕が窓口で見てきた感覚では、法人のRAID崩壊なんかは50万円を超える見積もりを見ることも珍しくなかった。ディスク3台以上でRAID組んでて、そのうち2台が同時に逝った、みたいなケース。あれは本当に金額を見て絶句する方が多かった。
ここで大事なのは、「相場」という言葉自体があまり意味を持たないくらい、症状によって桁が変わるということ。見積もりを取る前に「うちのは大体いくらですか」と聞かれても、正直に答えるなら「症状次第としか言えません」になる。
なぜこんなに高くなるのか
理由はいくつかあるけど、一番大きいのはクリーンルームの維持コストだと思う。プラッタを開封する作業は、ほんの少しの塵でも致命傷になるので、専用の設備がいる。この設備自体、導入も維持も安くない。中小の復旧業者でも自前のクリーンルームを持っているところは、それだけで固定費がかかっている。
部品調達もある。同じ型番のHDDのドナー(部品取り用)を確保しておく必要があって、廃番になった機種だと部品自体が市場に出回らず、探すのに手間と費用がかかる。
あとは技術者の人件費。データ復旧のエンジニアは経験がものを言う世界で、一人前になるまで数年かかると言われている。属人性が高い作業に、成功報酬型の値付けが乗ってくるので、単純な時給計算では説明がつかない金額になりやすい。
正直に言うと、「診断だけで数万円」みたいな業者を見ると身構えてしまう気持ちはよくわかる。ただ診断作業自体、分解して内部を確認するところまでやると、それだけで人と時間を使っている。無料診断をうたっている業者は、その分どこかで回収する仕組みになっているはずなので、成功報酬の割合や追加費用の有無を先に確認しておいたほうがいい。
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高い=悪徳とは限らない、でも見るべきポイントはある
高額な見積もりを見ると「足元を見られてるんじゃないか」と疑いたくなる気持ち、よくわかる。ただ僕の経験上、悪徳かどうかは金額の大小よりも、説明の仕方に出る。
症状を伝えただけで即座に「重度物理障害です、30万円です」と断言してくる業者は少し警戒したほうがいい。実機を見ずに正確な診断ができるケースは限られている。逆に、診断結果を写真や動作報告で見せてくれて、「ここまでは復旧見込みあり、ここから先は不明」と正直に幅を持って説明してくれる業者は、比較的信頼できる印象がある。
複数の業者で無料見積もりを取って比べるのは、面倒でも一番効く対策だと思う。同じ症状を伝えても、業者によって金額にかなり差が出ることがあるので、1社だけの見積もりで即決めるのはもったいない。
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高い料金を払う前に、自分でできることがないか確認する
そもそも症状によっては業者に頼まなくても自力で戻せることがある。誤って削除しただけとか、フォーマットしてしまっただけなら、無料の復元ソフトで解決するケースも実際にある。ここを飛ばして高額な見積もりに驚くのは、ちょっともったいない。
ただし線引きは大事で、HDDから「カチカチ」という異音がしていたり、水没・落下・焦げ臭いといった物理的なダメージがある場合は、自分でいじらないほうがいい。通電を続けるだけで状態が悪化して、業者でも直せなくなることがある。この見極め方については HDDがカチカチ音を立てる時の正しい対処と復旧の初動 にまとめているので、思い当たる音がする方は先にそちらを見てほしい。
論理障害か物理障害か自分では判断がつかない、という方も多いと思う。その場合の基準は データ復旧が自分でできる範囲と限界、業者に切り替える基準 で整理しているので参考にしてもらえたら。
外付けHDDが急に認識しなくなった場合の初動については 外付けHDDが認識しない時のデータ取り出し方法と初動 も合わせて見てもらうと、業者に出す前の判断がしやすくなると思う。
成功率と料金は必ずしも比例しない
もうひとつ知っておいてほしいのが、高い料金を払ったからといって必ず復旧できるわけではないということ。物理障害の中でも特に重度なものは、プラッタの傷の深さや発生から時間が経っているかどうかで、成功率がかなり変わってくる。
「着手金だけ取られて結局データは戻らなかった」という相談も、正直これまで何件か聞いてきた。だからこそ、成功報酬型(データが戻らなければ料金がかからない、または大幅に下がる)の業者を選ぶのは一つの防衛策になる。契約前に、失敗した場合の費用がどうなるか、必ず確認しておいたほうがいい。
SSDの場合はHDDとまた事情が違っていて、認識しない原因の特定自体が難しいこともある。この場合は下手に通電を繰り返さず、状態を保ったまま診断に出すのが無難。SSDが認識しない時の対処法とデータ復旧の可否を判断する方法 にも書いたけれど、SSDは復旧の可否がHDD以上にケースバイケースになりやすい。
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見積もりを見て「高い」と思ったら、まずそこで冷静になる
数万円、数十万円という金額を目の前にすると、パニックのまま契約してしまう人が結構いる。僕が窓口にいた頃も、「今すぐ決めないと壊れる」と急かされて即決してしまい、後から冷静になって後悔する相談を何度も受けた。
急いでいるときほど、一呼吸置いて他社の無料見積もりを取ってみてほしい。診断結果と金額の妥当性は、比較して初めて見えてくるものだと思う。データが消えたショックは大きいけれど、金額の判断だけは焦らずにやったほうが、結果的に後悔が少ない。今日できることがあるとすれば、まずは症状を簡単にまとめて、2〜3社に同じ内容で見積もりを依頼してみることじゃないかと思う。