深夜に事務所やお店でこの検索をしている人の多くは、たぶん今すぐ確認したい映像があるんだと思う。万引き、車の当て逃げ、従業員とのトラブル、あるいは警察や保険会社に提出するための証拠。呑気に調べ物をしている状況じゃないというのは、電話相談の現場で何度も見てきたのでよくわかる。
だからまず結論を先に言っておく。今この瞬間に録画機(DVRやNVR)の電源を切るか、少なくとも新しい録画をこれ以上させない設定にすること。それが一番大事な初動で、これをやらずに「復元ソフトを探す」「再起動してみる」を先にやると、消えた映像がさらに戻りにくくなる。
まず電源に触る前に、録画を止める
監視カメラのレコーダーは基本的に24時間録画を続けていて、HDDの容量がいっぱいになると古いデータから自動的に上書きしていく仕組みになっている。これは製品の説明書にも書いてある普通の動作で、故障でも何でもない。でも消えたデータを探している側からすると、これほど厄介な仕様もない。
つまり「消えた映像を復元したい」と思っている今この瞬間にも、レコーダーの電源が入って録画が続いていれば、探している映像の上にどんどん新しい映像が積み重なっていってる可能性がある。上書きされたブロックはもう戻ってこない。これは僕がサポート窓口にいた頃、何度も説明して「え、もう遅かったんですか」と言われた話でもある。
なので、映像を探す前に録画を止めるか、可能なら該当のHDDを取り外して単独で保管する。レコーダーの機種によっては「録画停止」ボタンやメニューがあるはずなので、まずそこを触ってほしい。むやみにレコーダー本体を再起動したり、別のポートに挿し替えたりするのは避けた方がいい。負荷がかかって状態が悪化するケースを何度も見てきた。
どのくらい前の映像なら残っている可能性があるか
正直、これは「絶対」とは言えない部分。ただ大まかな目安として、その製品の取扱説明書に書かれている「保存可能日数」のだいたい2倍くらいの期間に撮られた映像は、まだ物理的にディスク上に残っている可能性がある、という話がある。たとえば説明書に「約30日保存可能」とあるレコーダーなら、60日前後より新しい映像は残っている見込みがまだあるということ。逆に言うと、それより古い映像はすでに何周も上書きされていて、復元は現実的に厳しい。
ここ、業者に問い合わせる時にも聞かれるポイントなので、「いつの映像が欲しいのか」「何日前から録画が消えていることに気づいたか」はメモしておくといい。
自分で確認できること(ダメ元でもやる価値はある)
物理的な異音や水没がないなら、いくつか自分で確認できることがある。
多くのレコーダーには「ごみ箱」的な一時保管領域が備わっている機種があって、削除操作をした直後ならそこから復活できることがある。メニューの中に「削除済み」「ゴミ箱」のような項目がないか探してみてほしい。
もう一つ、ファームウェアの不具合で映像リストが表示されなくなっているだけ、というケースも実際にある。この場合はレコーダーのファームウェアを最新版に更新すると、消えたように見えていた録画が再表示されることがある。ただし更新中に電源を切ると致命的な故障につながるので、この作業だけは絶対に電源を切らずに完了させてほしい。更新が終わったら、日付を指定して録画一覧を確認する。
あとは単純に配線の緩みやHDDの接触不良で「録画は残っているのに読み込めない」ように見えているだけ、ということもある。レコーダーを開けられる知識があるなら、SATAケーブルや電源ケーブルの挿し直しくらいは確認してもいいと思う。ただしここから先、HDD自体を抜いてPCに繋いで中身を見ようとするなら要注意で、これは次の項目で説明する。
一般的な復元ソフトがほとんど効かない理由
パソコンで消えたファイルを直すソフト(たとえばリカバリーソフトの類)を、監視カメラのHDDにそのまま使おうとして「何も表示されない」「認識はするけど動画が壊れている」という相談を、僕は何十件も受けてきた。
理由は単純で、監視カメラ用レコーダーの多くは映像データを一般的なMP4やAVIのような形式でそのまま保存していない。独自のプロテクトがかかった専用フォーマットで記録していて、これはレコーダー本体以外の環境では正しく再生できない仕様になっている。だから市販の復元ソフトでファイルの断片は見つかっても、それを普通の動画として開けないケースがかなり多い。
このあたりは一般的なパソコンやUSBメモリのデータ復元とは事情がかなり違う。USBメモリの復元手順に近い感覚でやろうとすると空振りすることが多いので、期待値は下げておいた方がいい。USBメモリのデータが消えた時に無料で復元する方法で紹介しているような手順は、監視カメラ用HDDにはそのまま当てはまらないと思ってもらった方が正確だ。
異音がする、認識しない場合は自分でいじらない
ここは念を押しておきたい。HDDから「カチカチ」「キュルキュル」というような異音がしている、電源を入れても回転している気配がない、レコーダー自体が焦げ臭い、水没した形跡がある。こういう場合はもう物理的な故障で、自分でHDDを取り外して別のPCに繋ぐような操作は、状態を悪化させるだけで終わることが多い。
これは監視カメラ用に限らず、外付けHDD全般で同じことが言える。異音がしている時点で分解や再通電を繰り返すのは危険で、HDDのカチカチ音は物理障害。やってはいけないこと3つと正しい初動にも書いた通り、ここから先は専門業者に任せるべき領域だと僕は思っている。
法人の防犯カメラで使われるHDDは、家庭用の外付けHDDより長時間の連続稼働を前提にした製品が多いけれど、それでも寿命はある。むしろ24時間365日回り続けている分、消耗は早い。数年使ったレコーダーで急に録画が消えた、という相談では、ソフト的な問題よりHDD自体の劣化が原因だったケースを結構見てきた。
業者に頼む場合、実際いくらかかるのか
自分で試せる範囲を一通りやってダメだった場合、あるいは最初から異音などの物理的な兆候がある場合は、業者に見積もりを取るのが現実的な次の一歩になる。ここで気になるのはやっぱり料金だと思うので、確認できた範囲の情報を並べておく。ただし数字はあくまで各社の公式サイトなどに書かれていた情報をもとにした目安で、実際の金額や条件は障害の程度・時期によって変わるはずなので、鵜呑みにせず参考程度に見てほしい。
| 業者 | 料金体系の目安 | 対応スピード | 実績・保証 |
|---|---|---|---|
| A1データ(エーワンデータ) | 個人向けで軽度障害29,700円くらい〜、重度物理障害79,000円くらい〜と案内されているようだ(公式サイト掲載情報)。通常サービスは到着後およそ2〜3日で動き出すことが多いらしい | 障害状況により変動 | 国内実績80,000件以上とうたっている。ISO27001/ISMS認証を取得しているとのことで、作業後90日間の無償保証がつくプランもあるらしい |
| デジタルデータリカバリー | 5,000円くらい〜と案内されているが、総容量・障害の種類・工程数で決まるため要見積もり | 依頼の約8割を48時間以内に完了させているとのことで、首都圏なら最短2時間でオンサイト対応できる場合もあるという | 部品保有数7,300台以上(2022年6月調査時点の情報とのこと) |
| バッファロー データ復旧サービス | 保証期間内の同社製品なら軽度の論理障害は無償対応してもらえることがある | 要確認 | 自社製品限定のサービス |
料金体系は「障害レベルごとの定額プラン」か「復旧できた結果に応じて支払う成功報酬制」に大別されることが多くて、どちらが良い悪いというより、見積もり時にどちらの方式か・作業前後で料金が変わらないかを確認しておくと安心できる。この見積もりの見方についてはデータ復旧業者の選び方、高額請求トラブルを避ける見積もりの見方にもう少し詳しく書いた。
デジタルデータリカバリー
累計50万件超の相談実績。最短即日で無料診断でき、復旧できなければ費用がかからない成功報酬制。まず可否と概算を確認したい人向け。
初期診断・見積もりは無料
法人の防犯カメラ運用だと、複数台のカメラをまとめて記録しているNVRだったり、RAID構成のレコーダーだったりすることも珍しくない。この場合、単体HDDより構造が複雑になる分、見積もり時にレコーダーの型番と接続台数、RAIDを組んでいるかどうかを伝えておくと話が早い。RAID構成が絡む障害はraidリビルド失敗、崩壊したnasのデータは諦める前に確認したいでも触れているけれど、監視カメラ用のRAIDレコーダーも基本的な考え方は同じだと思ってもらっていい。
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PC・スマホ・タブレットのトラブルを電話や訪問でサポートしてくれる会員制サービス。データ以外のパソコンの困りごとが続く人向け。
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正直、「必ず直ります」とは僕の口からは言えない。上書きが進んでしまった範囲は物理的にもうデータが存在しないので、どんな業者でも復元は不可能。逆に上書きされる前で、HDD自体の物理障害も軽ければ、成功率は比較的高くなることが多い、というくらいには言える。ただこれもケースバイケースで、実際どうなるかは診断してみないと分からない部分が大きい。だからこそ「気づいた瞬間に電源を止める」という最初の一手が、結果を大きく左右する。
見積もりだけでも早めに取っておく理由
業者に依頼するかどうかまだ決めていなくても、無料見積もりを先に取っておくのは悪くない選択だと思う。診断してもらうことで「まだ上書きされていない」「物理障害はなさそうだから軽度で済みそう」といった状態が分かれば、そのまま自分で応急処置を続けるか、依頼するかの判断材料になる。逆に「もう物理障害が進んでいて、これ以上通電すると危ない」と言われたら、その時点で電源を切ったままにしておけばいい。
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僕がこれまで見てきた中で一番もったいなかったのは、消えたことに気づいてから2〜3日、社内で「誰が消したんだ」の犯人探しに時間を使ってしまって、その間もレコーダーが稼働し続けていたケース。犯人探しは映像さえ戻れば後からいくらでもできる。今すぐやるべきなのは、これ以上の上書きを止めることだけだ。
もし今、レコーダーの電源をまだ切っていないなら、この記事を読み終えたらまずそこから手をつけてほしい。そのうえで、自分で確認できる範囲(ごみ箱・ファームウェア更新・配線)を一通り試して、それでもダメなら無料見積もりで今の状態を診てもらう。それが今日できる、一番現実的な一歩だと思う。
症状が違うなら、こちらを読む
自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態
症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。
自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)
- 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
- 焦げ臭くない。煙は出ていない
- 水に濡れていない。落下させていない
- 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)
今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)
- カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
- 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
- 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
- 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
- RAID/NASでリビルドに失敗した
この状態でやってはいけない操作
- 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
- chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
- 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること
復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。
判断のもとにしている公的な情報源
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この記事を書いた人
真壁
データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年
メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。
