Macゴミ箱を空にした後の復元、試す前に知るべき現実

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深夜にMacの画面を見ながら、command+deleteでゴミ箱に入れて、そのまま「ゴミ箱を空にする」を押してしまった。数秒後に「あ、あのファイル要らなかったんじゃなくて要ったやつだ」と気づく。僕もこの相談を何度も受けてきたけど、大抵このパターンです。仕事の資料、家族写真、編集中の動画。押した瞬間はスッキリして、その直後に胃が痛くなる。

まず落ち着いてほしいのは、ゴミ箱を空にした=永久に消えた、ではないということ。ただし「まだ間に合うかどうか」はこの後の行動でかなり変わります。ここ、けっこう時間との勝負なんですよね。

とにかく今、そのMacを使うのをやめる

ゴミ箱を空にした直後にやるべきなのは、そのMacで何も新しく保存しないこと。写真を撮ってAirDropで送る、動画を書き出す、大きいファイルをダウンロードする、こういう作業を続けると、消えたファイルがあった場所に新しいデータが上書きされてしまう可能性が上がります。

特にMacの内蔵SSDは「TRIM」という機能が働いていて、削除されたデータの領域をシステムが早めに解放・整理してしまう傾向があります。これはWindowsのHDDとはちょっと事情が違って、正直に言うと復元の望みはWindowsより厳しめです。同じ「ゴミ箱空にした」でもMacとWindowsで難易度が結構違う、というのは知っておいてもいいと思います(Windowsの場合はゴミ箱を空にした後Windowsで復元する方法と成功率で書いたので、Windows機の方はこちらのほうが近いです)。

もし消えたファイルが入っていたのが外付けHDDやSSDだった場合は、そのドライブを一旦Macから外して、これ以上書き込みが起きない状態にしておくのが安全です。

Time Machineは確認したか

自分で試す前に一番確認してほしいのがこれです。設定アプリの「一般」→「Time Machine」を見て、そもそもバックアップが有効になっていたか。有効だった場合、消したファイルがあったフォルダをFinderで開いて、メニューバーのTime Machineアイコンから「Time Machineに入る」を選ぶと、過去の状態をタイムトラベルのように遡って見られます。

これで見つかれば一番早くて確実です。ソフトを入れる必要もリスクもない。ただ実際の相談だと、Time Machineを「設定した気になっていたけど実は動いていなかった」というケースがかなり多いです。外付けHDDを繋ぎっぱなしにしてないと定期的には動かないので、そこは一度確認してみてください。

iCloudや写真アプリの「最近削除した項目」も見落としがち

写真データなら、写真アプリ(Photos)のサイドバーに「最近削除した項目」というアルバムがあります。ここに入っているものは、削除してから最大30日間ほどは残っていて、選んで「復元」を押すだけで元に戻ります。ゴミ箱を空にしたのが写真アプリ内での削除だった場合、実はまだここに残っている可能性がある。焦って復元ソフトを探す前に、これは必ず見てほしいです。

書類やファイルの場合も、iCloud Driveを使っていれば、iCloud.comにログインして「データの復元」から30日以内に削除したファイルを取り出せる場合があります。ローカルのゴミ箱は空にしても、クラウド側にはまだ残っていた、というのは意外とよくある話です。

無料ソフトで試す、という選択肢

Time MachineもiCloudも空振りだった場合、次の手として無料の復元ソフトを試す人がいます。よく使われるのはDisk Drillのようなスキャン系ソフトで、無料版だとスキャンしてファイルの一覧を見るところまでは無料、実際に復元(書き出し)するには有料版が必要、という制限がついているものが多いです。

手順としては、ソフトをダウンロードしてインストール(このインストール先に消えたファイルがあったドライブを選ばないよう注意)、対象のドライブをスキャン、見つかったファイル名やサムネイルを確認、というのが基本の流れになります。

ここで正直に言っておきたいのは、Macの内蔵SSDに対してこの手のソフトを使っても、TRIMの影響でスキャンしても何も出てこない、ということが少なくないという点です。外付けのHDDやUSBメモリだった場合はまだ望みがある方で、内蔵SSDに保存していたファイルだと、僕が見てきた範囲でも復元できずに終わるケースの方が多かった印象です。成功率はケースによって本当にバラバラなので、「これをやれば戻る」とは言えないのがつらいところなんですけど。

外付けドライブでの作業に関しては、外付けHDDが認識しない時のデータ取り出し方法と初動にも近い話を書いているので、認識自体が怪しい場合はそちらも見てみてください。

自分でいじって悪化させる前に線引きしておきたいこと

ここまでは「論理的に消えた」ケースの話です。つまりドライブ自体は正常に動いていて、データの管理情報だけが消えた状態。

もし話が違って、外付けドライブから異音がする、水にこぼした後だ、コネクタ部分が変形している、というような物理的な異常があるなら、これは無料ソフトでどうにかなる話じゃないです。カチカチ音や焼けたような匂いがする場合、スキャンをかけること自体がさらにデータを壊す原因になります。この場合は自分でいじらず、早めに業者に相談したほうがいい。HDDがカチカチ音を立てる時の正しい対処と復旧の初動にも詳しく書きましたが、物理故障が疑われる時点で、自分で試せる範囲は正直かなり狭いです。

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業者に頼む場合の目安と、見積もりの見方

無料ソフトで見つからなかった、あるいはドライブに物理的な異常が疑われる、という場合は業者の無料診断を使ってみるのが次の一手になります。論理障害(ゴミ箱空にした程度)なら数万円くらいから、物理障害が絡むと部品交換や作業の難易度でもっと上がるのが一般的な相場感と言われています。ただこれは本当にドライブの状態次第で変わるので、「うちは〜円です」と断定してくる業者よりも、実物を見てから見積もりを出してくれるところの方が僕は信用しています。

見積もりを比較するときに見てほしいのは、診断料が本当に無料か、キャンセル時に費用が発生しないか、この2点です。ここが曖昧な業者は避けたほうがいい、というのが僕の経験上の感覚です。料金相場や見積もりで気をつけたいポイントはデータ復旧の料金相場と高い理由、見積もりで見るべき点にまとめてあるので、業者に出す前に一度目を通しておくと、話を聞くときの判断材料になると思います。

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どこまで自分でやって、どこで諦めるか

正直な話、僕自身もMacのゴミ箱を空にした直後にTime Machineが動いてなかったことに気づいて、青ざめた経験があります。結局そのときは幸い写真アプリの「最近削除した項目」に残っていて助かったんですけど、あれがなかったらどうしようもなかったと思う。

Time Machineとクラウドの「最近削除した項目」を確認するところまでは、リスクなくすぐできます。そこで見つからず、かつドライブに物理的な異常がないなら、無料の復元ソフトでスキャンしてみる価値はあります。ただそれでも見つからないことは普通にあって、その時点で「これ以上いじって状況を悪くするより、専門の目で見てもらったほうがいい」と判断するのも、僕はアリだと思っています。自分でどこまでやって、どこで手を止めるべきかについてはデータ復旧が自分でできる範囲と限界、業者に切り替える基準にも書いたので、迷ったら見比べてみてください。

今夜はまず、そのMacで新しいファイルを保存する手を止めて、Time Machineの設定画面を開くところから始めてみてください。それだけでも、状況は今よりだいぶ整理できるはずです。

症状が違うなら、こちらを読む

自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態

症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。

自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)

  • 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
  • 焦げ臭くない。煙は出ていない
  • 水に濡れていない。落下させていない
  • 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)

今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)

  • カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
  • 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
  • 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
  • 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
  • RAID/NASでリビルドに失敗した

この状態でやってはいけない操作

  • 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
  • chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
  • 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること

復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。

判断のもとにしている公的な情報源

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この記事を書いた人

真壁

データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年

メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。

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