電源ボタンの連打をやめる。今の状態のまま、いったん手を離す。 通電のたびに中のドライブが悪化することがある。 異音・焦げ臭さ・水没があるなら自力作業も禁止。確認手順はこの下で示す。
電源ボタンを何度も押して、画面が真っ暗なまま。ファンの音だけが虚しく響いて、明日提出の資料も、子どもの写真も、全部あの中に入っているのに取り出せない。時計を見たらもう深夜1時、なんてこともあるかもしれません。僕も昔、サポート窓口で同じような電話を何十件も受けてきました。声が震えている人、もう半分泣いている人。まず言いたいのは、パニックのまま電源ボタンを連打するのだけはやめてほしいということです。
電源を入れ直す前に、まずこれだけ確認してほしい
起動しないパソコンに対して一番やってしまいがちなのが、「もう一回押せば直るかも」で何度も電源のオンオフを繰り返すことです。これ、正直かなりリスクが高い行動です。中のHDDやSSDが物理的にダメージを受けかけている場合、通電のたびに状態が悪化することがあります。
まず落ち着いて、こんな症状がないか確認してください。
- カチカチ、ジー、キュルキュルといった異音がする
- 焦げたような匂いがする
- 水没させた、落とした直後である
- 電源を入れても一切のランプもつかない、ファンも回らない
このどれかに当てはまるなら、この後に書く自分での作業は一旦横に置いてください。理由は後で説明しますが、先に結論だけ言うと、これらは自力での分解や吸い出し作業でさらに壊してしまうケースが本当に多いからです。逆に、こういった症状が「ない」場合は、この後の手順を試す価値は十分にあります。
「起動しない」にも種類がある、というのが実は重要
一口に「起動しない」と言っても、僕がサポート窓口で聞いてきた限り、だいたい次の三パターンに分かれます。
電源は入るけどWindowsのロゴやメーカーロゴから先に進まない。これはOS側、つまりソフト的な不具合(論理障害)であることが多く、中のドライブ自体は生きていることが少なくありません。
画面が真っ暗で何も表示されない、ファンも回らない。これは電源ユニットやマザーボードなど、ドライブ以外の部分が壊れている可能性が高いパターンです。この場合、実はドライブ自体は無事なことも多くて、データ取り出しの望みは意外とあります。
そして先ほど挙げた異音や水没があるケース。これは中のドライブそのものが物理的に壊れかけている、あるいは壊れているパターンで、一番慎重に扱う必要があります。
自分がどのパターンに近いか、まずここを見極めてから次に進んでください。
自分でできる取り出し方、実際の手順
異音や水没がなく、パソコン本体(マザーボードや電源)側の故障が疑われる、あるいはOSが起動しないだけの場合、中のHDD・SSDを取り出して別のパソコンに外付けする方法が一番現実的です。
やり方はそこまで難しくありません。まずパソコンの電源プラグを完全に抜いて、静電気対策をしてから背面や底面のネジを開けます。ノートパソコンなら機種によってドライブへのアクセスパネルが独立していることもありますし、全体を開けないといけない機種もあります。正直、ここはメーカーや型番によってかなり差があるので、「(機種名) HDD 取り外し」で検索して手順を確認しながら進めるのが確実です。
ドライブを取り出したら、SATA-USB変換ケーブルやHDDケース(2,000〜4,000円くらいで家電量販店やネット通販に売っています)を使って、別の生きているパソコンにUSB接続します。これで運が良ければ、外付けドライブとして認識されて、中のファイルにそのままアクセスできます。
もし認識はするけどフォルダが開けない、エラーが出るという場合は、無料のデータ復旧ソフト(Recuva、EaseUS Data Recovery Free版など)を使ってスキャンしてみる価値があります。ただし正直に言うと、無料版はスキャンして「これだけ見つかりました」までは見せてくれても、復元自体は容量制限があったり有料版への誘導だったりすることが多いです。過度に期待せず、あくまで「何が残っているか確認する手段」くらいに考えておくといいと思います。
外付けHDD自体が認識しないケースについては外付けHDDが認識しない時のデータ取り出し方法と初動にも詳しく書いたので、合わせて読んでみてください。
それでも認識しない、または異音がある場合
ドライブを取り出して外付け接続しても、うんともすんとも言わない。あるいは最初の段階で異音があった。こういう場合は、僕は正直、これ以上自分でいじるのはおすすめしません。
理由はシンプルで、物理的に壊れているドライブは開けたり、何度も通電させたりするほど状態が悪化するからです。プラッタに傷がついたり、モーターが完全に止まってしまったりすると、そこから先はプロの設備(クリーンルームや専用機材)がないと手が出せなくなります。ここで無理をして、業者に出しても直せない状態にまで悪化させてしまった相談を、僕は何件も見てきました。
こういう症状の見分け方や、自分でどこまでやっていいかの線引きはデータ復旧が自分でできる範囲と限界、業者に切り替える基準にまとめてあるので、迷ったらそちらも見てみてください。HDDのカチカチ音についてはHDDがカチカチ音を立てる時の正しい対処と復旧の初動も参考になると思います。
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業者に頼む場合の料金感と、見積もりの見方
業者に出す場合、料金は症状の重さでかなり幅があります。論理障害(ソフト的な原因)なら1〜3万円くらいで済むこともありますし、物理障害でドライブを分解して部品交換が必要なレベルになると10万円を超えることも珍しくありません。この幅、正直「え、そんなに違うの」と思われるかもしれませんが、実際そうなんです。
大事なのは、最初から高い業者・安い業者と決めつけず、無料診断・無料見積もりを出してくれるところで、症状を伝えて概算を聞いてみることです。診断だけなら費用がかからない業者も多いので、まずは複数の見積もりを比較してから決めるくらいの余裕を持ってほしいと思います。料金の内訳や見るべきポイントについてはデータ復旧の料金相場と高い理由、見積もりで見るべき点で詳しく書いています。
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ちなみに、SSDの場合はHDDとは壊れ方の傾向が違っていて、認識しなくなった瞬間に手を打つタイミングがより重要になります。SSD特有の症状についてはSSDが認識しない時の対処法とデータ復旧の可否を判断する方法も見ておくと安心材料になるかもしれません。
結局、今夜どうすればいいのか
ここまで読んで、「じゃあ結局自分でやっていいのか、業者に出すべきなのか」が一番知りたいところだと思います。僕の感覚で言うと、異音や水没がなく、単にOSが起動しないだけなら、ドライブを取り出して外付けで試す価値は十分にあります。実際、それだけで「なんだ、普通に開けた」というケースも決して少なくありません。もちろん、これをやれば必ず直るというものではなく、成功するかどうかはドライブの状態や壊れ方次第でかなり差が出ることは頭の片隅に置いておいてください。
一方で、少しでも異音や焦げ臭さ、水没の心当たりがあるなら、今夜のところは無理せず電源を切ったまま朝を待って、業者の無料診断を予約するところまでを今日のゴールにしてもいいと思います。データは、慌てて手を出すより、正しい順番で確認していく方が結果的に守れることが多いです。焦る気持ちはよく分かりますが、まずは症状の切り分けから始めてみてください。
症状が違うなら、こちらを読む
自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態
症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。
自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)
- 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
- 焦げ臭くない。煙は出ていない
- 水に濡れていない。落下させていない
- 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)
今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)
- カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
- 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
- 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
- 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
- RAID/NASでリビルドに失敗した
この状態でやってはいけない操作
- 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
- chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
- 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること
復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。
判断のもとにしている公的な情報源
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この記事を書いた人
真壁
データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年
メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。
