深夜に「あ」って声が出た人、多いと思います。何時間もかけた資料、明日の会議で使う表、閉じるボタンを押した瞬間に「保存しますか?」のダイアログをスルーしてしまった、あるいはパソコンがフリーズして強制終了せざるを得なかった。心臓がぎゅっとなる感覚、僕も何度も経験しているのでよくわかります。
まず落ち着いてほしいのは、この状況は「完全に消えた」わけではないケースが結構多いということです。Excelには自動回復という機能があって、あなたが気づいていないところで裏側にバックアップを取ってくれていることがあります。ただ「必ず戻る」とは言えません。作業の途中で保存していたかどうか、Excelの設定がどうなっていたかで結果は変わります。ここは正直に言っておきたいところです。
今すぐやってはいけないこと、ひとつだけ
新しいExcelファイルを同じフォルダにたくさん作ったり、パソコンをシャットダウンして再起動を繰り返したりするのはやめてください。自動回復用の一時ファイルは、パソコンの動作次第で上書きされたり消えたりすることがあります。「とにかく開き直す」のは大事なんですが、闇雲に色々操作するのは逆に危険です。まずは深呼吸してから、次の手順に進んでください。
Excelを開き直すと出てくる「回復済みファイル」
一番簡単なパターンから話します。パソコンがフリーズしてExcelが落ちた、あるいは電源が落ちてしまった、という場合。もう一度Excelを起動してみてください。画面の左側に「ドキュメントの回復」というウィンドウが自動で出てくることがあります。ここに「(自動保存された)」と書かれたファイル名があれば、それをクリックして内容を確認してみましょう。
このウィンドウが出ない場合でも、まだ手はあります。Excelを起動して、「ファイル」タブから「情報」を開いてください。「バージョンの管理」という項目に「保存されていないドキュメントの回復」というボタンがあるはずです。これをクリックすると、UNSAVEDFILES というフォルダが開いて、拡張子が.asdのファイルが並んでいることがあります。ファイルの更新日時を見て、作業していた時間帯に近いものを開いてみてください。
正直に言うと、このasdファイルは保存されていなかった内容の「最後の自動保存タイミング」のものなので、閉じる直前の1分間の作業までは戻っていないことが多いです。それでも、ゼロから作り直すよりは全然楽なはずです。
「名前を付けて保存」を一度もしていない新規ファイルの場合
これがちょっと厄介なパターンです。一度も保存せずに新規で作ったファイルをうっかり閉じてしまった場合、上のUNSAVEDFILESフォルダを見ても何も入っていないことがあります。Excelの初期設定では、自動保存の間隔は10分に設定されていることが多いんですが、この10分の間に作業を始めて閉じてしまった場合、まだ一時ファイルが作られていない可能性があるんですよね。
この場合は、パソコンの中の一時フォルダを直接のぞいてみる方法があります。エクスプローラーのアドレスバーに次のように入力してみてください。
`%appdata%\Microsoft\Excel`
このフォルダの中に、作業していた時間に近い更新日時のファイルがないか確認します。拡張子が見えないファイルや、tmpという文字が入ったファイルがあれば、コピーして別の場所に貼り付けてから、拡張子を.xlsxに変更して開いてみる手もあります。ただこれ、うまくいく時とそうでない時の差が大きいです。僕がサポート窓口にいた頃も、ここで見つかって涙目で感謝されたケースもあれば、何も残っていなくて申し訳ない気持ちになったケースも両方ありました。
OneDriveやクラウド保存を使っていた人は先にここを確認
もしそのExcelファイルの保存先がOneDriveやSharePoint、あるいは会社の共有ドライブだった場合は、先に「バージョン履歴」を確認したほうが早いです。ファイルを右クリックして「以前のバージョン」あるいはOneDriveの履歴機能を見てみると、数分おきの自動保存が残っていることがあります。特に会社のPCでOneDrive同期を使っている人は、自動回復機能より先にこちらを試すほうが確実性が高い印象があります。
逆に、USBメモリやSDカードに保存していたファイルを開いていて、そのファイル自体が消えた・壊れたという場合は話が変わってきます。これは自動回復の話ではなくて、メディア側の物理的な問題になってくるので、別の記事で詳しく書いています。
それでも見つからなかったら、無料の復元ソフトを試す価値はある
asdファイルもtmpファイルも見つからなかった、OneDriveの履歴もない。ここまで来ると正直、望みは薄くなってきますが、ゼロではありません。一時ファイルは「削除」されてWindowsのゴミ箱にすら入らずに消えることがあるんですが、ディスク上のデータそのものはすぐには上書きされていない場合があります。無料のデータ復元ソフトで、パソコンのCドライブ全体をスキャンしてみると、まれにExcelの一時ファイルが引っかかってくることがあります。
ただこれ、スキャンにかなり時間がかかることと、成功率はケースによって本当に差があることは先に言っておきます。何時間かけても見つからないこともザラです。それでも無料で試せる範囲なので、時間に余裕があるならやってみて損はないと思います。ゴミ箱から消したファイルの復元手順と考え方はこちらにまとめてあるので、参考にしてみてください。
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自分でどうしても見つけられない、諦める前に
ここまで試して見つからない場合、僕がいつも思うのは「そのファイルがどれだけ重要か」で次の判断が変わるということです。明日の会議資料程度なら作り直すのも手ですが、何ヶ月もかけた設計データや、顧客リストのような再現不可能なものだった場合は、業者に相談する価値はあると思います。
ただし正直に言うと、こういう論理的な消失(物理的に壊れてはいない)の場合、業者に頼んでも一時ファイルがすでに上書きされていれば復元は難しいこともあります。業者の無料診断・無料見積もりを使って、まず「復元できる可能性がどれくらいあるか」を聞いてみるのが現実的です。料金感としては、この程度の論理障害なら数千円〜数万円くらいで案内されることもあるようですが、これは本当にケースバイケースなので、まずは見積もりを取って判断材料にしてください。
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自分でどこまでできて、どこから業者に切り替えるべきかの判断基準は、こちらの記事でもう少し詳しく書いています。
次に同じ思いをしないために、設定だけ見直しておく
今回のことが片付いたら、Excelの自動保存の間隔を一度確認してみてください。「ファイル」→「オプション」→「保存」のところに、自動回復用データの保存間隔という項目があります。初期値の10分を5分や1分に短くしておくだけで、次に同じことが起きたときの被害はかなり小さくなります。僕も一度痛い目にあってから、この設定だけは真っ先に変えるようにしています。
それと、Microsoft 365を使っているならOneDriveへの自動保存をオンにしておくのも地味に効きます。保存ボタンを押す文化がなくなるので最初は落ち着かないかもしれませんが、慣れると「保存しないで閉じた」という事故そのものが起きにくくなります。
今この瞬間、まだ何も見つかっていなくて焦っている人がいたら、まずは落ち着いて「ファイル」→「情報」の画面を開いてみてください。そこに何かが残っているかどうかで、この後の気持ちの持ちようがずいぶん変わってくるはずです。
症状が違うなら、こちらを読む
自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態
症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。
自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)
- 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
- 焦げ臭くない。煙は出ていない
- 水に濡れていない。落下させていない
- 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)
今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)
- カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
- 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
- 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
- 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
- RAID/NASでリビルドに失敗した
この状態でやってはいけない操作
- 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
- chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
- 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること
復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。
判断のもとにしている公的な情報源
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この記事を書いた人
真壁
データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年
メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。
