さっきまで開いていたWordが、フリーズしてそのまま落ちた。慌ててもう一度開いたら真っ白な画面。数時間かけて書いた企画書とか、明日の朝一で出す報告書とか、そういう「今すぐ必要なやつ」に限ってこうなる。深夜にスマホでこの検索窓に打ち込んでる時点で、たぶん心臓がまだドキドキしてると思う。僕もサポート窓口にいた頃、同じ電話を週に何本も受けてた。
まず落ち着いてほしいのは、Wordが落ちただけなら、まだ十分に望みがあるということ。物理的にディスクが壊れたわけじゃなくて、「保存してなかった」というだけの話なら、パソコン自体は正常に動いてる。ここで焦ってPCを再起動しまくったり、余計な一時ファイル削除ソフトを走らせたりすると、かえって回復のチャンスを潰すことがあるので、まずは深呼吸してこのまま読み進めてほしい。
結論、自動回復ファイルはここに保存されている
Wordには「自動回復」という機能があって、作業中の文書を裏側で定期的に一時保存している。強制終了した後にWordをもう一度開くと、この自動回復ファイルを勝手に探しに行って、見つかれば画面の左側に「ドキュメントの回復」という作業ウィンドウが出てくる仕組みだ。
まずはこれを確認してほしい。パスを直接見に行きたい人のために、実際の保存場所を先に出しておく。
| 環境 | 保存場所 |
|---|---|
| Windows(自動回復ファイル) | `C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Roaming\Microsoft\Word` |
| Windows(未保存文書) | `C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Microsoft\Office\UnsavedFiles` |
| Mac(自動回復ファイル) | `/Users/ユーザー名/Library/Containers/com.microsoft.Word/Data/Library/Preferences/AutoRecovery/` |
AppDataフォルダは普段は隠しフォルダになっているので、エクスプローラーのアドレスバーに直接このパスを貼り付けて開くのが早い。「隠しファイルを表示する」設定を探すより、パスを打ち込んだほうが確実。
まずWordを開き直して、慌てず画面を見る
一番最初にやることは、Wordをもう一度起動することだけ。ここで大事なのは、変に別のファイルを保存したり、同じフォルダに新規ファイルを大量に作ったりしないこと。書き込みが増えるほど、一時ファイルが上書きされて消えるリスクが上がる。
Wordを開いたら、左側に「ドキュメントの回復」というウィンドウが出ていないか確認する。ここには「ファイル名 [元]」と「ファイル名 [回復済み]」のように、複数のバージョンが並ぶことがある。[回復済み]のほうが強制終了直前に近い内容になっていることが多いので、両方開いて中身を見比べて、内容が多いほうを別名で保存する。これで解決するケースも、実際に相談を受けていた感覚だと少なくない。
このウィンドウが出てこなかった場合は、次の手を試す。
ドキュメント回復ウィンドウが出ない時の手動操作
Wordを開いた状態で、ファイル → 情報 → 「文書の管理」という項目を探す。そこに「保存されていない文書の回復」というボタンがあるので、これをクリックすると、Wordが自動的に保存していた未保存文書の一覧が出てくることがある。ここに目当てのファイルがあれば、開いて名前を付けて保存するだけでいい。
これも出てこない、あるいは一覧が空だった場合は、拡張子で直接探しにいく段階になる。
エクスプローラーの検索ボックスで、以下の拡張子を順番に検索してみてほしい。
- `.asd`(自動保存の一時ファイル)
- `.wbk`(バックアップコピー、Wordのオプションでバックアップ機能をオンにしている場合に作られる)
- `.tmp`(一時ファイル。ファイル名が「~」から始まっていることもある)
検索場所は「このPC」全体を指定して、少し時間がかかっても待つ。見つかったファイルは、直接ダブルクリックせずに、必ずWordの「開く」メニューから開く。ファイルの種類を「すべてのファイル」に切り替えないと表示されないことがあるので、そこも忘れずに。
ローカル保存かクラウド保存かで、探す場所がまるで違う
ここ、意外と見落とされてるんだけど、すごく大事な分岐点。
そのWord文書を、OneDriveやSharePoint上のフォルダから開いていた場合、Wordは「自動保存」機能を使ってクラウド側にリアルタイムで変更を反映している。つまり自動回復ファイルを探すより先に、Wordの画面上部にある「バージョン履歴」を確認したほうが早い。ファイルタブから「バージョン履歴」を開けば、数分おきの過去バージョンが一覧で並んでいることが多く、強制終了直前に近い状態まで遡れる可能性が高い。
逆に、パソコンのローカルディスクや社内のネットワーク共有フォルダから開いていた場合は、自動保存ではなく「自動回復」の仕組みが働く。この場合はここまで説明したAppDataフォルダや拡張子検索のほうが本命になる。
自分がどっちのタイプで作業していたか思い出せない人は、まずOneDriveのアイコンがタスクバーにあるか、ファイルを開いたフォルダのパスに「OneDrive」という文字が入っていたか、そこを確認してみるといい。
なぜ自動保存ファイルが消えてしまうことがあるのか
ここまでやっても見つからない、ということも正直ある。理由はいくつかあって、一番多いのは「Wordを正常に上書き保存して終了した後」に自動回復ファイルが自動削除されるケース。つまり強制終了する前に一度でも保存していれば、自動回復ファイルは役目を終えたとみなされて消えている。
もう一つは、強制終了後にWordを開いて「ドキュメントの回復」ウィンドウが出たのに、そこで何も選ばずに閉じてしまった場合。この場合も一時ファイルが破棄されることがある。
あとはPCの再起動や、パソコンのクリーンアップソフト・一時ファイル削除ツールが動いてしまって、AppData以下の一時ファイルごと消えてしまうケース。これは僕が窓口にいた頃、地味に多かった原因だ。「調子が悪いから再起動した」という一言で、探していたファイルが消えていることがある。だからこそ、強制終了直後は余計な操作を挟まず、まずWordを開くところから始めてほしい。
それでも見つからない時、データ復元ソフトという選択肢
拡張子検索でも出てこない、バージョン履歴にも残っていない、という場合は、パソコン内の一時ファイル領域からデータ復元ソフトでスキャンするという方法が残っている。一時ファイルは削除された直後であれば、ディスク上にデータの残骸が残っていることがあり、それを拾い上げられる可能性がある。
ただ正直に書くと、この段階まで来ると成功率はケースによってかなりばらつく。強制終了からどれくらい時間が経ったか、その間にパソコンをどれだけ使ったか、対象のファイルサイズなどで結果は変わってくる。「必ず戻る」と言い切れる話ではないので、そこは過度に期待しすぎず試してほしい。
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無料版でスキャンだけ試して、目当てのファイルが検出リストに出てくるかどうかを見てから、本格的な復元(有料版への切り替え)を検討するという使い方が現実的だと思う。ソフトによって復元対象や操作の分かりやすさに差があるので、いきなり課金するより、まず無料スキャンで手応えを確認するのがおすすめ。
似た状況をExcelで経験した人向けに、エクセル保存しないで閉じた、復元できるか今すぐ確認する方法にも同じ考え方の手順をまとめているので、あわせて見てもらえると分かりやすいと思う。
今後のために、設定を少しだけ見直す
今回はどうにか助かったとしても、この経験は一度で十分だと思う。Wordのオプション画面(ファイル→オプション→保存)で、「次の間隔で自動回復用のデータを保存する」の数値を確認してほしい。デフォルトは10分になっていることが多いんだけど、これを5分以下に短縮しておくと、強制終了した時に失われる作業量がぐっと減る。
あわせて「自動回復ファイルの場所」の下にある「上書き保存しないで終了する場合は、最後に自動回復されたバージョンを保持する」にもチェックを入れておくと、正常終了時でも一時ファイルがすぐには消えなくなる。
もう一つ、僕が個人的におすすめしたいのは、普段使いのファイルをOneDriveのフォルダに置く習慣に変えること。クラウド保存にしておけば、今回のようなケースでもバージョン履歴からほぼリアルタイムで復元できることが多い。ローカル保存にこだわる理由が特にないなら、これだけで今後のこの手のトラブルはかなり減ると思う。
短く答えておきたいこと
強制終了した直後、パソコンの電源を切っていいか聞かれることがあるけど、これはやめたほうがいい。まだ一時ファイルがメモリやディスクのキャッシュに残っている段階で電源を落とすと、拾えるはずだったデータまで失う可能性がある。まずはWordを開き直すところから。
スマホ版のWordアプリの場合は、クラウド保存が前提の設計になっていることが多く、開いていたファイルがOneDriveやSharePointに紐づいていれば、アプリを開き直すだけで自動的に最新の編集内容が復元されていることが多い。ローカルにしか保存していなかった場合は、こうした自動回復の恩恵を受けにくいので、そもそもスマホで作業するファイルはクラウド保存にしておくのが安全だと思う。
パソコンの調子が悪くて、Wordだけじゃなくハードディスク自体が怪しい(異音がする、認識が不安定など)場合は、この記事の対処法とは別の問題になる。そこは無理に自分でいじらず、パソコン起動しないデータ取り出し、まず確認すべき初動と手順を先に見てもらったほうがいい。ディスクそのものの物理的な問題は、ソフトでどうこうできる話じゃないので。
今回は「保存してなかった文書をどう戻すか」という話だったので、まずはWordを開き直して回復ウィンドウを確認するところから始めてみてほしい。それで駄目でも、拡張子検索、バージョン履歴、データ復元ソフトと、まだ手は残っている。全部試しても見つからない可能性はゼロじゃないけど、そこまでやり切った人を僕は何人も見てきたし、意外とどこかの段階で見つかることのほうが多い。
症状が違うなら、こちらを読む
自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態
症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。
自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)
- 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
- 焦げ臭くない。煙は出ていない
- 水に濡れていない。落下させていない
- 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)
今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)
- カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
- 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
- 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
- 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
- RAID/NASでリビルドに失敗した
この状態でやってはいけない操作
- 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
- chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
- 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること
復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。
判断のもとにしている公的な情報源
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この記事を書いた人
真壁
データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年
メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。
