水没スマホのデータ復旧、電源を入れる前に知ってほしいこと

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トイレに落とした。洗濯機に入れたまま回してしまった。子供とプールに行って、ポケットに入れっぱなしだったのに気づいたのが1時間後。状況は人それぞれだけど、今この記事を読んでいるあなたの手の中には、たぶん電源が入らなくなったスマホがあって、頭の中は真っ白か、あるいは「まだ間に合うはず」という焦りでいっぱいだと思う。

僕がサポート窓口にいた頃、水没の相談は本当に多かった。そして正直に言うと、その場の対応で結果が大きく変わるケースをたくさん見てきた。だからまず、今すぐやってほしくないことから話す。

電源を入れない、充電しない、振らない

濡れたスマホを見て、多くの人が最初にやってしまうのが「電源が入るか試す」ことなんだけど、これが一番まずい。水没直後は内部にまだ水分が残っていて、その状態で通電すると基板がショートする。水没した瞬間には無事だった回路が、電源を入れたことで壊れる、というパターンをかなり見てきた。

充電ケーブルを挿すのも同じ理由でNG。それから、水を出そうとして激しく振るのも避けたほうがいい。水滴が奥に入り込んでしまうことがある。

やることはシンプルで、電源を切る(すでに切れているならそのまま)。SIMカードやSDカードが取り出せる機種なら抜いておく。あとは表面の水分をティッシュや布で軽く拭き取って、乾いた場所に置いておく。それだけ。

ドライヤーの温風で乾かそうとする人も多いんだけど、これも僕はおすすめしない。熱で内部の部品が傷むし、風圧で水分がかえって奥に入り込むこともある。米びつに入れる方法も昔からよく聞くけど、米の粉が端子部分に入り込んで別の故障を引き起こした例も見ているので、僕は積極的には勧めていない。乾燥剤(シリカゲル)と一緒に密閉容器に入れて、24〜48時間くらいは待つ、というのが無難なところだと思う。

どれくらい待てばいいのか、正直な答え

「何時間待てば大丈夫ですか」とよく聞かれるんだけど、これは正直、機種や水没の程度によって全然違う。真水に一瞬触れただけなのか、海水やお風呂のお湯にどっぷり浸かったのかでもリスクは変わる。海水や石鹸水は真水より腐食が進みやすいと言われている。

目安として1日、できれば2日は電源を入れずに我慢する。ここで焦って早めに試すと、内部がまだ湿った状態で通電してしまうリスクがある。逆に言うと、待っている間にできることはほとんどない。この時間は「祈る時間」に近い。

乾燥後、電源が入ったらすぐやること

丸一日以上待って、恐る恐る電源を入れてみて無事に起動したら、まずやるべきはデータのバックアップ。写真がクラウド同期の設定になっているなら、Wi-Fiに繋いで同期状況を確認する。iPhoneならiCloud、Androidならグーグルフォトあたりが自動同期されているケースが多い。

同期されていない写真や動画がある場合は、PCに繋いで手動でコピーしておく。この段階で意識してほしいのは「一度動いたからといって安心しない」ということ。水没したスマホは、一時的に動いても数日後にバッテリーが膨張したり、突然電源が落ちて二度と起動しなくなったりすることがある。だから起動した瞬間が、データを救い出せる最後のチャンスかもしれないと思って、まずバックアップを最優先にする。

Androidで写真が見当たらない、消えたように見える場合は、こちらの記事にもう少し細かい手順をまとめてある。

写真復元アプリ無料でAndroidの消えた写真を戻す方法

SDカードが挿さっていた機種なら、SDカード自体は水没の影響を受けにくいこともある。取り出して乾燥させたあと、カードリーダーでPCに繋いで読めるか試す価値はある。

SDカードの写真が消えた スマホで復元する前にやること

こうなったら自分でどうにかしようとしない

ここからが一番大事な話。次のような症状が出ている場合、僕はあまり自分でいじらないほうがいいと思っている。

電源を入れても画面が真っ暗なまま何の反応もない。充電しようとしても発熱がひどい、焦げたような匂いがする。画面の一部が変色していたり、水没から時間が経ってバッテリー部分が膨らんできている。こういう物理的な異常が出ているスマホは、素人が分解したり無理に通電させたりすると、中の基板やメモリチップが完全に壊れてしまう可能性がある。

一度完全に壊れたメモリチップからデータを取り出すのは、専用の設備を持つ業者でも簡単ではないケースがある。だからこそ、症状が重いと感じたら、それ以上いじらずに専門業者へ相談するのが結局は一番安全だと僕は思っている。

物理故障と論理故障の違いや、自分でできる範囲の見極め方については、こちらにもう少し詳しく書いた。

データ復旧が自分でできる範囲と限界、業者に切り替える基準

業者に頼むといくらかかるのか

水没スマホの復旧料金は、正直なところ幅がすごく広い。軽度の水没で基板に大きなダメージがなければ3万円くらいからで、内部の腐食が進んでいたり、メモリチップの交換が必要なレベルだと10万円を超えることもあると聞く。スマホは内部構造が小さくて密集しているぶん、HDDやSDカードの復旧より難易度が高くなりがちで、料金もそれに応じて上がる傾向があるようだ。

料金の相場感や見積もりで確認すべきポイントについては、こちらの記事にまとめてある。

データ復旧の料金相場と高い理由、見積もりで見るべき点

高額請求やぼったくりを心配する声もよく聞くんだけど、信頼できる業者は基本的に無料診断・無料見積もりを行っていて、実際に作業する前に金額を提示してくれる。逆に、診断前に「これくらいかかります」と即断で高額を提示してくる業者には、僕は慎重になったほうがいいと思う。複数社に見積もりを取って比較するのは、決して失礼なことじゃない。

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焦げ臭い、変色がある場合はここへ

海水やお風呂のお湯に浸かった場合、真水よりも腐食の進行が早い傾向があると言われている。数日経ってから急に電源が入らなくなった、というケースもあるので、一度動いたからといって放置せず、少しでも異常を感じたら早めに専門業者に相談してほしい。基板の腐食が進んだ状態を扱う技術力は業者によって差があるので、水没や物理故障に強いとうたっている業者を選ぶのも一つの手だと思う。

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僕自身、相談を受けていた頃に「もっと早く電源を切ってくれていたら」と思うケースを何度も見てきた。逆に言えば、水没直後の数分の判断だけで、その後の結果がかなり変わることもある。

今、目の前のスマホの電源が入っていないなら、それはそれで一つの正解かもしれない。まずは無理に電源を入れず、乾燥剤と一緒に密閉容器へ。そのうえで、1〜2日待って様子を見て、それでも反応がなかったり異常な症状が出ているなら、その時点で無料見積もりを一件出してみる。それが今日できる、一番現実的な一歩だと思う。

症状が違うなら、こちらを読む

自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態

症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。

自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)

  • 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
  • 焦げ臭くない。煙は出ていない
  • 水に濡れていない。落下させていない
  • 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)

今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)

  • カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
  • 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
  • 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
  • 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
  • RAID/NASでリビルドに失敗した

この状態でやってはいけない操作

  • 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
  • chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
  • 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること

復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。

判断のもとにしている公的な情報源

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この記事を書いた人

真壁

データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年

メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。

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