夜中に「あ」と声が出て、それからスマホを何度も開いたり閉じたりしていませんか。トークルームを間違えて削除した、機種変更したら過去のやり取りが全部消えていた、アップデート後に開いたら空っぽだった。バックアップ設定はオンにしていたつもりが、実際には取れていなかった。僕がPCサポートの窓口にいた頃も、月に何件かはこの手の相談が来ました。恋人とのやり取り、亡くなった家族との最後のトーク、仕事の重要な指示。消えた中身によって、電話の向こうの声のトーンが全然違ったのを覚えています。
先に結論を言ってしまうと、バックアップなしでもゼロではないけれど、期待しすぎるとつらいというのが正直なところです。iPhoneかAndroidか、機種変更したのかアプリ内で削除しただけなのか、削除してからどれくらい時間が経っているかで、可能性はかなり変わります。今日中に手を打てば助かったかもしれないものが、一週間スマホを普通に使い続けたことで潰れてしまうケースを何度も見てきました。
まず、これ以上何もしないでほしい
パニックになっていると、つい「とりあえずアプリを再インストールしよう」「もう一度バックアップを取り直せば戻るかも」と手を動かしたくなります。ここが一番危ないところです。
トーク履歴が削除された直後、そのデータは端末の中から完全に消えているわけではなく、見えない状態で残っていることがあります。ただしそこに新しいデータが書き込まれると、上書きされて本当に取り戻せなくなる。LINEアプリを再インストールしたり、写真をたくさん撮ったり、他のアプリを大量にダウンロードしたりする行為は、この「上書き」を引き起こす可能性があります。
今すぐやるべきなのは、スマホを普通に使い続けないこと。特にストレージの空き容量が少ない機種は要注意です。空きが少ないと新しいデータがすぐ古い領域に上書きされてしまうので、余計なアプリの更新やダウンロードは一旦止めておいたほうがいいです。
端末に残っている可能性がある条件を整理する
ここが今回一番伝えたいところです。「復元できるかどうか」は一律に決まっているわけではなく、いくつかの条件の組み合わせで変わります。
iPhoneの場合、正直に言うとかなり厳しいです。iOSはセキュリティの仕組み上、アプリの削除データに外部からアクセスすることが構造的に難しく設計されています。バックアップ(iCloudやiTunes)がなければ、トークルームを削除した時点でほぼ手詰まりというのが実際のところです。サードパーティの復元ソフトを謳う製品もありますが、iOS側の制約でスキャン自体がうまく機能しないことが多い。ここを「できます」と言い切っている記事を見ると、僕はちょっと引いてしまいます。
Androidは機種によって話が変わってきます。LINEのトークデータは端末内のSQLiteという形式のデータベースファイルに保存されていて、アプリ内でトークを削除しても、このファイル自体がすぐに完全消去されるわけではないケースがあります。ただしこれは「root化していない一般的な使い方をしている限り、自分でファイルを直接触るのはほぼ不可能」という前置きが必要です。専門知識がないままアプリでファイルを覗こうとしても、たいてい権限がなくて弾かれます。ここから先に踏み込めるのは、専用ツールを持つ復元ソフトか、業者の技術力ということになります。
もうひとつ、意外と見落とされがちなのがPC版LINEです。スマホ側でトークを削除しても、PC版LINEをネットに繋がずオフラインの状態で開くと、同期が走る前の古いトーク内容がそのまま表示に残っていることがあります。これは可能性がある人だけの話で、パソコン版LINEを普段から使っていない人には当てはまりません。もし使っていたなら、慌ててオンラインにする前に、一度オフラインのまま中身を確認してみる価値はあります。
自分でできることを、期待値込みで並べる
順番としては、お金もリスクもかからないものから試すのが筋です。
一番手堅いのは、トークをしていた相手に確認することです。相手のスマホにはまだトークが残っている可能性があります。「テキストでバックアップを送って」とお願いすれば、LINEにはトーク内容をテキストファイルとして送信する機能があるので、写真や動画までは戻せなくても、文面だけなら復元に近い形で手に入ります。スクリーンショットでも構いません。地味な方法ですが、成功率で言えばこれが一番高いです。ただし相手も同じタイミングで削除していたら、これは使えません。
次に試すのが、先ほど触れたPC版LINEのオフライン確認です。ここは持っている人だけのオプションだと思ってください。
その次に、サードパーティの復元ソフトです。代表的なものにTenorshareのUltData LINE Recoveryがありますが、正直に言うと無料版でできるのはスキャンして「復元できそうなデータがどれくらいあるか」プレビューするところまでです。実際にデータを取り出すには有料版が必要で、月額6,000円前後で自動更新される課金形態になっているようです(数日間だけ全機能を試せる案内を見かけますが、料金体系は変わることがあるので使う前に必ず公式サイトで確認してください)。ここで大事なのは、プレビュー画面に自分の探しているトークが表示されるかどうかを、課金前に必ず確認すること。表示されないのに課金してしまうと、当然戻ってきません。
そして、iPhoneに関してはこの手のソフトでも復元できないケースがかなり多いという点は、繰り返し伝えておきたいです。「あらゆるケースで復元します」という謳い文句を見かけますが、実際にはOSの制約で対応できる範囲に限りがあります。過度な期待はしないほうがいいです。
業者に頼む価値があるかどうかの見分け方
ここまで自分で試して駄目だった場合、次に考えるのが業者への依頼です。ただ、これは誰にでもおすすめできるものではありません。僕がサポート窓口時代に感じていたのは、「業者に出す価値があるケース」と「出しても無駄になるケース」がはっきり分かれるということでした。
価値があると思うのは、削除してからまだ時間が経っていない、端末を普通に使い続けていない、そして中身が仕事の証拠や法的に必要な資料など、コストをかけてでも取り戻す理由がある場合です。逆に、削除から数週間経っていてスマホを普通に使い続けている、機種変更して古い端末はもう手元にない、失ったのが日常の雑談程度で「あったら嬉しいけど絶対必要ではない」という場合は、正直、数万円払ってまで踏み込む価値があるかは冷静に考えたほうがいいと思います。
もうひとつ大事なのが、iPhoneかAndroidかという点です。Androidで、端末が物理的に壊れておらず、削除直後であれば、業者側の技術で拾える可能性はゼロではありません。iPhoneの場合は、業者に出しても構造上の制約で「復元できるものが見つかりませんでした」という結果になることも十分あり得ます。無料相談や無料見積もりの段階で、担当者に「iPhoneのトーク削除でバックアップなしの場合、実際どれくらいの割合で復元できていますか」と率直に聞いてみるといいです。ここで歯切れの悪い答えしか返ってこない業者は、僕ならちょっと警戒します。
このあたりの「自分でできる範囲と、業者に切り替える判断基準」は、別の記事でも整理しているので、迷っている人はあわせて読んでみてください。
料金の目安と業者の比較
具体的な料金は機種や状態、依頼するタイミングによって変わってくるので、あくまで目安として見てください。数字は各社の案内をもとにしたおおよその参考値で、実際の金額は無料見積もりで確認するのが一番確実です。
| サービス名 | 料金体系(目安) | 初期診断 | 成功報酬制 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| Dr.Data | 基本料金33,000円くらい〜(機種・症状で変動) | 要確認 | あり | 明朗会計を重視する人 |
| デジタルデータリカバリー | 要見積り(30,000〜50,000円程度と言われている) | 無料 | 要確認 | 最短即日対応を求める人、対応スピードを重視する人 |
| スマホデータ復旧.com | 成功報酬制27,500円くらい〜(症状による) | 無料 | あり | 復元できなければ支払いたくない人 |
料金は変動しますし、機種や壊れ方によっても大きく変わってきます。上の数字はあくまで参考で、実際に依頼する前には必ず無料見積もりで最新の金額を確認してください。「診断は無料」と謳っている業者でも、診断後に思ったより高い見積もりが出てくることはあります。見積もりの内容に納得できなければ、その場で断って構いません。断り方や、その後の端末の扱いについては別記事にまとめています。
業者選びで失敗したくないという気持ちは、僕も痛いほどわかります。高額請求のトラブルを避けるための見積もりの見方は、こちらの記事でも詳しく書きました。
データ復旧業者の選び方、高額請求トラブルを避ける見積もりの見方
デジタルデータリカバリー
累計50万件超の相談実績。最短即日で無料診断でき、復旧できなければ費用がかからない成功報酬制。まず可否と概算を確認したい人向け。
初期診断・見積もりは無料
やってはいけないことをもう一度
くどいようですが、ここは何度でも言いたいところです。トーク履歴が消えたことに気づいた後、「試しにもう一度バックアップを取ってみよう」と操作するのは避けてください。今ある状態を上書きする形で新しいバックアップが作られてしまうと、古いデータが入り込む余地がなくなります。同様に、LINEアプリのアンインストールと再インストールも、状況によっては残っている可能性のあるデータを消す方向に働くことがあります。
スマホの空き容量を確保しようとして大量の写真や動画を削除したり、逆に新しいアプリをたくさん入れたりするのも、上書きのリスクを高めます。何か手を打つ前に、まず今の状態のままキープする。これが一番の初動です。
これからのために、バックアップの取り方だけ確認しておく
今回は仕方ないとして、次に同じ思いをしないための設定は、今のうちに済ませておくといいと思います。iPhoneはiCloud、AndroidはGoogleドライブを使ってバックアップを取る仕組みになっていて、LINEの設定画面の中に「トークのバックアップ」という項目があります。ここで自動バックアップをオンにしておけば、次にトークが消えても、ログイン後に「トーク履歴を復元」を選んで、届く6桁のPINコードを入力するだけで戻せる可能性がぐっと上がります。
僕自身、家族との連絡用アプリはLINEもLINE以外もバックアップを疑って月イチで確認するようにしています。一度痛い目を見た人ほど、この確認作業をルーティンにしている印象があります。
機種を変えたら、それだけで詰むのか
もうひとつよく聞かれるのが、iPhoneからAndroid、あるいはその逆に機種変更した場合の話です。結論から言うと、異なるOS間ではそもそもトーク履歴の引き継ぎができない仕組みになっています。同じOS同士(iPhoneからiPhone、AndroidからAndroid)であればバックアップを使った引き継ぎができますが、OSをまたぐ場合は、たとえバックアップを取っていたとしても、そのまま復元することはできません。この点は多くの人が誤解しているところなので、機種変更を考えている段階なら先に知っておいたほうがいいです。
相手も同じタイミングで削除していたらどうしようもないのか、という質問もよく受けます。正直、その場合はかなり厳しいです。相手のスマホに残っていることに賭ける方法が使えなくなるので、残る手段は端末内のデータ復元か、業者への相談に絞られてきます。
最後に、僕から
僕がこの仕事をしてきて感じるのは、「消えた」と気づいた瞬間の行動が、その後の結果をかなり左右するということです。パニックのまま操作を続けるか、一旦手を止めて状況を整理するか。この一呼吸だけで、数日後の結末が変わることがあります。
今夜できることは、まずスマホを普通に使い続けないこと。相手に確認できるならメッセージを送ってみること。それでも手元に何もなくて、どうしても取り戻したい理由があるなら、無料見積もりを使って業者に率直に聞いてみること。全部やってダメだったとしても、それは自分を責めることではないと思います。バックアップの仕組み自体、正直ちょっと不親切なところがありますから。
症状が違うなら、こちらを読む
自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態
症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。
自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)
- 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
- 焦げ臭くない。煙は出ていない
- 水に濡れていない。落下させていない
- 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)
今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)
- カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
- 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
- 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
- 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
- RAID/NASでリビルドに失敗した
この状態でやってはいけない操作
- 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
- chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
- 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること
復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。
判断のもとにしている公的な情報源
このサイトについて
この記事を書いた人
真壁
データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年
メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。
