HDDから異音ジーが聞こえたら通電やめるべきか、今すぐの判断

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深夜にこの記事を見つけた人は、たぶん今まさにPCの前で耳をすませているんじゃないかと思う。外付けHDDか、パソコンの中の内蔵HDDか。「ジー」という音が聞こえて、でも画面上はまだファイルが開けたりする。だから余計に迷う。今すぐ電源を切るべきなのか、それともこの隙にコピーしておくべきなのか。

僕は前職でPCサポートの窓口に5年いて、こういう電話を数えきれないくらい受けてきた。結論から言うと、「ジー」という音がしているなら、今すぐ通電をやめるのが正解だ。理由はこのあときちんと説明するけど、まずこの一点だけ覚えて、ブラウザのタブを閉じる前にPCの電源を落としてほしい。今読んでいるページはそのままでいいから、電源だけ先に切る。それくらい急ぐ話だと思ってほしい。

なぜ「ジー」という音は危険信号なのか

HDDの中には、円盤(プラッタ)の上をわずかに浮いた状態で移動する磁気ヘッドという部品が入っている。正常な状態なら、このヘッドはプラッタに触れずに読み書きしている。「ジー」「ジジジ」という連続音がするとき、多くの場合はこのヘッドがプラッタに吸着してしまっていたり、モーターの回転がうまくいかずに擦れてしまっている状態だ。

僕が窓口にいたとき、「音は小さいから大丈夫だと思って使い続けたら、翌日には完全に無反応になった」という相談を何件も聞いた。正直、これがいちばん多いパターンだと思う。ジー音は耳を近づけないと気づかないくらい小さいことも多くて、「気のせいかな」で済ませてしまいやすい。でも音がしているということは、内部で何かが正常じゃない動きをしているということだから、放置していい理由には絶対にならない。

通電を続けるとどうなるか。ヘッドとプラッタの接触が悪化して、プラッタの記録面に傷がついていく。傷がつくと、その部分に記録されていたデータは物理的に読み取れなくなる。しかも困ったことに、この進行スピードは一律じゃない。数分で急激に悪化するケースもあれば、数時間持ちこたえるケースもある。個体差が大きすぎて「あと何分は大丈夫」みたいな目安を出せないのが正直なところだ。だからこそ、「今は平気そうだから」で通電を続けるのがいちばん危ない。

HDDの異音、種類で危険度がかなり違う

ひとくちに異音と言っても、音の種類でだいたいの状態が見えてくる。うちで整理した目安は以下の通りだ。

音の種類 主な原因 危険度の目安
ジー、ジジジ 磁気ヘッドの吸着、モーター異常 高い(今すぐ通電をやめるべき)
カチカチ、カリカリ ヘッドの異常動作、位置決めの失敗 高い(同上)
ガリガリ、ゴリゴリ ヘッドとプラッタの接触、傷 非常に高い(既にダメージ進行中の可能性)
キュルキュル、キーキー モーター軸受けの摩耗 中〜高
ブーン、ブオーン モーターが正常に回転しない 高い(起動不良の前兆)
無音(何も聞こえない) 基板(PCB)障害の可能性 判断が難しい。異音がないから安全とは限らない

カチカチ音については、以前 HDDのカチカチ音は物理障害。やってはいけないこと3つと正しい初動 で詳しく書いたので、もし音の種類がはっきりカチカチ寄りならそちらも見てほしい。ジー系とカチカチ系は原因の部品が違うだけで、「通電を続けたら悪化する」という結論は同じだ。

ちなみに、まったく音がしないからといって安心はできない。基板が壊れているときは音自体が出ないことも多い。「音がしないから軽症」ではなく、「認識するかしないか」「異音があるかないか」を別々に見る必要がある。

今すぐ電源を切るべきケース、少しだけ様子を見てもいいケース

ここは正直、他のサイトがあまり踏み込んでいないところだと思うので、僕なりの線引きを書いておく。

すぐに電源を切るべきなのは、次のどれかに当てはまる場合だ。ジーやジジジ、カチカチ、ガリガリといった連続音がしている。エクスプローラーでファイルを開こうとすると固まる、または異常に遅い。数分前まで正常だったのに急に異音が始まった。こういうときは、今この瞬間に電源ボタンを長押ししてでも止めるべきだと僕は思う。

一方で、「様子を見てもまだ選択肢が残っている」ケースもなくはない。たとえば、異音ではなく単なる動作音(ファンの音やアクセスランプの点滅に伴う軽いカリカリ音)を異音と勘違いしているケース。これは古いHDDだとわりとよくある。判断に自信がないなら、無理にコピーを試すより先に、一度電源を切って冷静に音を聞き直すことをおすすめする。焦って動くより、まず止まる方が安全側に倒れる。

大事な資料のバックアップを慌てて取ろうとする人も多いけど、これはかなり危険な行為だ。バックアップのためのコピー作業は、HDDに対して大量の読み込みを要求する。異音が出ている状態でこれをやると、症状が一気に進行してしまうことがある。「今のうちにコピーしておこう」という気持ちはすごくよく分かるけど、その一回のコピーで完全に認識しなくなったという相談を、僕は何度も受けてきた。

やってはいけないこと

異音が出ているHDDに対して、絶対にやってほしくないことがいくつかある。

  • 電源のオン・オフを何度も繰り返す(認識するかどうか試したくなる気持ちは分かるが、繰り返すほどヘッドへの負荷が増える)
  • 叩く、揺らす、落とすなど衝撃を与える(内部の部品がさらにずれる)
  • 自分でカバーを開けて分解する(プラッタの記録面にホコリが付着すると、それだけで読み取り不能な範囲が広がる)
  • 再起動を繰り返す(起動のたびに書き込み動作が発生し、負荷が蓄積する)
  • CHKDSKやフォーマット、データ復元ソフトの実行(論理障害には効くこともあるが、物理障害の疑いがあるHDDに対しては逆効果になりやすい)

このあたりは「何かすれば直るかもしれない」という期待から手を出してしまいがちなんだけど、異音が出ている時点でそれは論理障害ではなく物理障害のサインだと考えたほうがいい。論理障害なら自分でできることも結構あって、その範囲は データ復旧が自分でできる範囲と限界、業者に切り替える基準 にまとめてある。ただ、異音が出ているケースはこの「自分でできる範囲」からは基本的に外れると思ってほしい。

内蔵HDD、外付けHDD、NASで対応は変わるか

内蔵HDDの場合、まずPCをシャットダウンする。異音が出ている状態で「再起動」を選ぶのは避けて、電源メニューからきちんとシャットダウンするか、応答がなければ電源ボタンの長押しで強制終了する。

外付けHDDの場合は話が単純で、USBケーブルを抜くかコンセントから抜けばいい。ただし抜く前に、可能ならOS側から「安全な取り外し」の操作を一度試みてから抜くほうが、突然の切断による追加ダメージを避けやすい。とはいえ異音がひどい場合はそんな悠長なことを言っていられないこともあるので、その場合は最優先で物理的に電源を落として構わない。外付けHDDが認識しない段階からの初動は 外付けHDDが認識しない時のデータ取り出し方法と初動 にも書いているので参考にしてほしい。

NASの場合はちょっと事情が違う。NASは複数のHDDでRAIDを組んでいることが多く、1台に異音が出ているからといって慌てて電源を切ると、リビルドの途中だった場合に構成全体が崩れることがある。NASで異音が出ているときは、単独のHDDよりも慎重な判断が必要になる。この点は NAS故障でデータ取り出したい時、最初にやってはいけないこと で詳しく触れているので、NASユーザーの人はそちらも読んでおいてほしい。

自分で直せるか、業者に頼むべきか

ここまで読んで、もう察していると思うけど、異音が出ているHDDを自分でどうにかしようとするのは基本的におすすめしない。論理障害(誤って削除した、フォーマットしてしまった等)なら無料ソフトで対応できる範囲は結構ある。でも物理障害、特に異音が絡むケースは、専用のクリーンルームや部品交換の技術が必要になることが多くて、個人の環境でどうにかできる話じゃない。

正直に言うと、僕自身も窓口時代、異音のするHDDに対して「開けて掃除すれば直るかも」と言ってきたお客さんを止めたことが何度もある。気持ちは分かるんだけど、素人が分解すると復旧の可能性そのものを潰してしまう。

料金の相場感だけは知っておくと心の準備になると思う。データ復旧業者の料金は、論理障害でおおよそ3万円〜25万円くらい、物理障害だと4万円〜70万円くらい、症状の重さによってはそれ以上になることもある。これはあくまで相場の幅であって、実際の金額は診断してみないと分からない。多くの業者は無料診断・無料見積もりを行っているので、まずは見積もりだけ取って、金額を見てから依頼するかどうか決めるという流れが現実的だと思う。

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業者を選ぶときにチェックしておきたいのは、無料診断があるかどうか、成功報酬制(データが取り出せなかった場合は基本料金以外かからない仕組み)かどうか、データ復旧に関する業界団体に加盟しているかどうか、あたりだ。加盟しているから絶対安心とは言い切れないけど、一つの目安にはなる。見積もり金額の見方や、依頼前に確認しておくべき点は データ復旧業者の選び方、高額請求トラブルを避ける見積もりの見方 にまとめてあるので、依頼を検討し始めたらぜひ目を通してほしい。料金の相場についてもっと詳しく知りたい場合は データ復旧の料金相場と高い理由、見積もりで見るべき点 も参考になると思う。

一つだけ正直に書いておくと、異音が出ているHDDは「電源を入れるたびに状態が変わる」性質がある。今日通電したら認識したけど、明日にはもう認識しない、ということが普通に起こる。専門業者の間では「ワンチャンス」という言い方をすることもあるくらいで、だからこそ、無闇に何度も電源を入れて試すのではなく、通電の回数そのものを最小限にして、できるだけ早い段階で専門家に見てもらうのが結果的にデータが残る可能性を高めることになる。

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必ず復旧できるとは言えない、それでも今できること

ここまで色々書いてきたけど、正直に言うと、異音が出ているHDDが必ず復旧できるとは僕には言えない。症状の進行度合い、どのくらいの範囲のプラッタが傷ついているか、依頼するまでの間にどれだけ通電してしまったか、いろんな要素で結果は変わる。復旧率が何パーセントという断言もできない。ケースバイケースというのが本当のところだ。

でも、今この瞬間に電源を切るという行動だけは、誰にでもできて、しかも復旧の可能性を少しでも上げる行動だと思う。ジーという音がしているなら、まずは通電をやめる。それから慌てず、無料診断を受け付けている業者に連絡して、今の状況(いつから音がしているか、どんな操作をしたか、どのくらい重要なデータが入っているか)を伝える。それだけで、今夜やるべきことはもう十分だ。

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もし「これはカチカチ音に近いかもしれない」と思ったら、先に紹介した HDDのカチカチ音は物理障害。やってはいけないこと3つと正しい初動 も併せて読んでおくと、判断材料が増えると思う。今はとにかく、通電を止めて、深呼吸してからでいい。

症状が違うなら、こちらを読む

自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態

症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。

自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)

  • 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
  • 焦げ臭くない。煙は出ていない
  • 水に濡れていない。落下させていない
  • 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)

今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)

  • カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
  • 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
  • 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
  • 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
  • RAID/NASでリビルドに失敗した

この状態でやってはいけない操作

  • 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
  • chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
  • 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること

復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。

判断のもとにしている公的な情報源

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この記事を書いた人

真壁

データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年

メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。

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