今すぐ電源を切る。ケーブルも抜く。再起動・抜き差しは厳禁。 通電のたびにヘッドが盤面を削る。削れた場所は業者でも戻らない。 音の種類と回数だけメモすればいい。理由はこの下で説明する。
カチカチ音は、内部の磁気ヘッドが読み取りに失敗して往復している音。大半が物理障害。ソフトで直る話ではない。ここから先は、やってはいけないこと3つ、症状別の判断表、業者に出す前の準備の順で示す。
やってはいけないこと3つ
手順より先に禁止事項。この3つを守るだけで、残せるデータの量が変わる。
NG① 電源の入れ直し・抜き差しを繰り返す
「もう1回だけ」が一番データを殺す。 通電するたび、傷んだヘッドが盤面(プラッタ)に接触する。接触した場所の記録は物理的に消える。サポート窓口時代、「あと3回試してから電話しました」というケースの復旧率は目に見えて低かった。試行回数と救えるデータ量は反比例する。
NG② 復元ソフトでスキャンをかける
異音がある個体へのスキャンは、弱った機械への長距離走。 無料復元ソフトが有効なのは、円盤が無事でデータの管理情報だけ壊れた「論理障害」の場合。カチカチ音は円盤かヘッドの物理損傷。スキャンはヘッドを盤面全域に往復させる行為で、症状を確実に進める。USBメモリやSDカードとは前提が違う。ソフトで戻る症状かどうかの線引きは自分でできる復元の限界にまとめた。
NG③ 冷凍庫・分解・叩く
開けた時点で、多くの業者が「対応不可」か難易度激増と判断する。 冷凍庫で一時的に動いた武勇伝はネットに転がっている。だが結露で基板がショートするリスクの方が高い。うまくいった話だけがSNSで目立つ。生存バイアスの典型。分解も同じで、クリーンルーム外で開ければ微細なホコリが盤面に載る。ホコリ1粒がヘッドと盤面の間に挟まれば、そこは終わる。
症状別の判断表
電源を切ったら、状態を思い出して次の表に当てはめる。
| 症状 | 障害の見立て | 次の一手 |
|---|---|---|
| カチカチ・カコンカコンと周期的な音 | ヘッド損傷の可能性大(物理) | 通電せず業者の無料診断へ |
| ガリガリ・ジージーと擦れる音 | 盤面接触の可能性(物理・重度) | 即時通電停止。最優先で業者へ |
| ブーン→カチッ→停止を繰り返す | ヘッド退避またはモーター起動失敗(物理) | 通電せず業者の無料診断へ |
| 音は正常だが認識しない | 論理障害またはケーブル・電源の問題 | 外付けHDDが認識しない時の切り分けへ |
| 水没・焦げ臭い・発煙を伴う | 基板損傷を含む複合障害 | 乾かさない・通電しない。業者一択 |
判断は一つ。異音があるなら自力復旧の選択肢は無い。異音が無いなら論理障害の可能性が残るので、別記事の手順で切り分けられる。
業者に出す前の準備 4ステップ
1. 電源を切り、ケーブルを抜いた状態で保管する。振動を避け、平らな場所に置く。 2. 音の種類(カチカチ/ガリガリ/カコン)と、鳴り始めた時期・頻度をメモする。 3. 落下・停電・水濡れなど、直前に起きたことをメモする。診断の精度が上がる。 4. 中に入っている「絶対に必要なデータ」を書き出す。フォルダ名まで分かれば伝える。全部ではなく優先順位を伝えると、診断も見積もりも速い。
輸送時は、帯電防止袋か厚手のビニールに入れ、緩衝材で包む。裸のまま封筒に入れるのは避ける。
費用の目安と、見積もりで確認すべきこと
料金は症状・容量・業者で大きく変わる。論理障害寄りの軽度なら1万円前後から。ヘッドやモーター交換を伴う重度の物理障害なら5万〜10万円以上になる場合もある。これはあくまで目安。実際の金額は診断しないと分からない。
だからこそ、診断と見積もりが無料の業者から当たるのが現実的。契約前に確認すべき点は3つ。
1. 診断・見積もりは無料か。キャンセル時の返送料は誰が持つか。 2. 復旧できなかった場合の費用はどうなるか(成功報酬制か)。 3. 見積もり後の追加請求が発生する条件は何か。
電話口の対応も判断材料になる。「カチカチ音なら物理障害の可能性が高いので、通電せずそのまま送ってください」と即答できる業者は現場を知っている。「とりあえず送ってください」しか言わないなら、比較対象を増やしたほうがいい。
デジタルデータリカバリー
累計50万件超の相談実績。最短即日で無料診断でき、復旧できなければ費用がかからない成功報酬制。まず可否と概算を確認したい人向け。
初期診断・見積もりは無料
2社程度から話を聞いても、時間のロスは大きくない。相談・診断の段階で費用が発生しない業者を選んでいれば、比較のコストはゼロに近い。
G・O・G 会員制パソコンサポート
PC・スマホ・タブレットのトラブルを電話や訪問でサポートしてくれる会員制サービス。データ以外のパソコンの困りごとが続く人向け。
全国対応/個人・法人プランあり
よくある質問
Q. 一度だけ電源を入れてデータをコピーするのはダメか。 勧めない。コピーは大量の読み取り=ヘッドの往復そのもの。半分コピーしたところで完全に停止し、残り半分が業者でも戻らなくなったケースを見てきた。今読める状態を凍結して業者に渡す方が、結果的に多く残る。
Q. 業者に出せば必ず戻るのか。 戻らないことがある。物理障害の復旧可否は、傷の深さと進行度で決まる。同じ音でも戻ったケースと戻らなかったケースの両方がある。だからこそ通電停止までの速さが結果を左右する。「必ず復旧」と断言する業者がいたら、その言葉自体を疑ったほうがいい。
Q. カチカチ音が消えて普通に動き出した。もう安心か。 安心ではない。一時的に読めているだけで、ヘッドの劣化は戻らない。動いているうちに必要なデータを別ドライブへ退避し、そのHDDの常用はやめる。異音の再発は時間の問題と考えたほうがいい。
Q. NASやRAIDでも同じ対処でいいか。 通電停止までは同じ。ただしRAIDは構成情報が絡むため、個別のディスクを触る前に読んでほしいことがある。NAS故障時のデータ取り出しにまとめた。
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最後に一つだけ。深夜にこの記事へ辿り着いた時点で、正しい行動は始まっている。電源はもう切った。ならば今夜できることは終わりだ。メモを書いて、寝ていい。診断の連絡は明日でも結果は変わらない。慌てた操作だけが、結果を変えてしまう。
症状が違うなら、こちらを読む
自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態
症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。
自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)
- 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
- 焦げ臭くない。煙は出ていない
- 水に濡れていない。落下させていない
- 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)
今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)
- カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
- 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
- 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
- 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
- RAID/NASでリビルドに失敗した
この状態でやってはいけない操作
- 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
- chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
- 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること
復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。
判断のもとにしている公的な情報源
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この記事を書いた人
真壁
データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年
メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。
