深夜に電話がかかってきたことがある。「HDDからカチカチ音がして、何度も電源入れ直してるんですけどダメで」と。その「何度も入れ直してる」がもう危ないんです、という話を、まずしたい。
カチカチ音、カコンカコンとかガガガッみたいな音でもいいんですが、これが鳴っている時点で、僕の経験上、大半は物理的な故障です。ソフトで直る話じゃない。中の磁気ヘッドがディスクの表面をうまく読み取れずに彷徨っている音で、車で例えるならエンジンから金属を擦るような音がしている状態に近い。走らせ続けたらどうなるか、想像つきますよね。
まずやることは「電源を切る」、それだけ
音に気づいた瞬間、いちばん大事なのは通電を止めることです。パソコンなら強制終了ではなく、できれば通常のシャットダウンで。それも難しいくらい反応がないなら電源ボタン長押しでも仕方ない。とにかく止める。
外付けHDDなら、ケーブルを抜く。USBハブ経由なら大元のコンセントも抜いておく。ここで「もしかしたら直るかも」と何度も抜き差しして再認識を試みる人がすごく多いんですが、これが一番やってはいけない。ヘッドがディスクに接触して傷をつけている最中に、電源を入れ直すたびにその傷が広がっていくイメージです。僕が窓口にいた頃、最初の電話で「あと3回くらい試してから連絡しました」と言われたケースの復旧率は、正直かなり下がっていました。
音がしているHDDを見つけたら、その場でケーブルを抜く。これだけ覚えて帰ってもらえたら、この記事の半分は目的達成です。
自分でできることは、ほぼありません
USBメモリやSDカードなら、無料の復元ソフトでファイルを救い出せることがよくあります。実際、USBメモリのデータが消えた時に無料で復元する方法やSDカード認識しない時の復元方法、業者に出す前の判断基準で書いたような手順が有効な場面は多い。
ただ、それは論理障害、つまりデータの管理情報が壊れているだけで、中の円盤自体は無事なケースの話です。カチカチ音は違う。円盤かヘッドか、あるいはその両方が物理的に傷んでいる。この状態でリカバリーソフトを使ってスキャンをかけると、ヘッドがディスク上を何度も往復することになって、症状を悪化させることがあります。最悪、今なら読める部分すら読めなくなる。
だから正直に言うと、カチカチ音がしている時点で「自分で試せる方法」はほぼ無いんですよね。強いて言うなら、周波数の低いドスンという音なのか、高めのカチカチなのか、頻度はどれくらいか、メモしておくくらい。これは業者に相談するときに状態を伝える材料になります。
冷凍庫に入れる、叩く、といった昔ながらの民間療法もネットには転がっていますが、僕はこれはおすすめしません。一時的に動くことがあるにはあるんですが、結露で基板がショートしたり、衝撃でさらに傷が広がったりするリスクの方が高い。うまくいった話ばかりがSNSでバズるので目立つだけで、実際にはダメになったケースの方が多いはずです。
水没・異臭・発煙があるなら、なおさら業者一択
カチカチ音に加えて、水没した、焦げ臭い、内部から煙が出た、というような状況なら、これはもう自分でどうこうする段階じゃありません。基板が完全にダメになっていたり、内部にホコリや水分が入り込んで別の部品まで巻き込んでいたりすることがある。
こういうケースを個人でいじると、直せる可能性があったものまで直せなくなることがあります。僕が見てきた中でも、一度自分で分解して掃除しようとして、クリーンルームでもない部屋でディスクを開けてしまい、微細なホコリが入って状態が悪化した、という相談が何件かありました。分解した時点で、多くの業者では「対応不可」または「難易度が跳ね上がる」と言われる可能性が高くなります。開けないこと、これに尽きます。
業者に頼むといくらかかるのか
気になるのはここですよね。正直に言うと、症状と容量、依頼する業者によってかなり幅があります。
論理障害寄りの軽度なものなら1万円くらいから。物理障害でヘッドやモーターの交換が必要な重度のものになると、5万円〜10万円くらい、場合によってはそれ以上になることもあると言われています。これはあくまで目安で、実際の金額は診断してみないと分かりません。だからこそ、まずは無料見積もり・無料診断をやっている業者に状態を伝えて、実際の金額を確認するのが現実的だと思います。
僕がよく聞かれるのは「見積もりだけで料金取られませんか」という不安なんですが、多くの業者は診断・見積もりまでは無料としています。ここは契約前に必ず確認してほしいポイントで、逆に「診断だけで数千円かかります」と言われたら、他の業者とも比較してみるといいと思います。
どの業者に頼むか迷ったら
正直、これは僕も毎回悩みます。答えが一つじゃないので。実績年数、対応スピード、そして何より「症状を聞いた段階でどれくらい具体的な説明をしてくれるか」を見ています。電話口で「カチカチ音ですね、それは物理障害の可能性が高いので、通電は止めたままお送りください」とすぐ言えるところは、現場の経験値が違う印象があります。逆に「とりあえず送ってください、診てみないと分かりません」しか言わないところは、ちょっと様子見したくなる。
サポート対応の丁寧さも比較材料になります。
G・O・G 会員制パソコンサポート
PC・スマホ・タブレットのトラブルを電話や訪問でサポートしてくれる会員制サービス。データ以外のパソコンの困りごとが続く人向け。
全国対応/個人・法人プランあり
急いでいるとどうしても最初に見つけた業者に飛びつきたくなりますが、電話一本、あるいはチャットで数分聞くだけで見えてくることは多い。2社くらいには話を聞いてから決めても、時間的に大きくは変わらないはずです。
復旧できる確率について、正直な話
ここまで読んで「じゃあ業者に出せば絶対直るんですね」と思われたら、それは違います。物理障害の復旧は、部品の摩耗具合や傷の深さによって成功率が大きく変わります。僕が窓口にいた頃も、同じような音でも復旧できたケースとできなかったケースがありました。これは技術力うんぬんより、故障の進行度合いによるところが大きい。
だからこそ、音に気づいた瞬間にどれだけ早く電源を切れるかが、結果的に復旧できる可能性を左右します。「様子を見よう」と数日放置してから連絡が来ると、その数日間の使用でさらに悪化していることも珍しくありません。
音がしたその日のうちに、ケーブルを抜いて、電源を入れずに保管しておく。それだけで、後から選べる選択肢の幅がだいぶ変わってきます。焦る気持ちは分かりますが、まずは深呼吸して、電源を切ることから始めてもらえたらと思います。
