夜中に外付けHDDを繋いだら、いつものフォルダが開かずに「ドライブ E: をフォーマットする必要があります」って出てきた。それで検索窓に「hdd raw 表示 フォーマットしない 復元」って打ち込んだ人、たぶん今画面の前で固まってますよね。分かります、その気持ち。
僕は前職のPCサポートで、この「RAW表示」の相談を数えきれないくらい受けてきました。結論から言うと、フォーマットの案内が出ても、押さなければ中のデータはまだそこにある可能性が高いです。慌てて「はい」を押さなければ、まだ間に合う場面が多い。ここ、本当に大事なので最初に言っておきます。
まず絶対にやってはいけないこと
フォーマットのボタンを押さない。これがすべての出発点です。RAW表示というのは、HDD自体が壊れたというより、ファイルシステム(NTFSとかexFATとか)の管理情報がおかしくなって、Windowsが「これは何のドライブか分からない」と判断している状態のことが多いんですよね。中のデータは無事なのに、目次だけが壊れているようなイメージです。
ここでフォーマットを実行すると、その「壊れた目次」ごと新しい目次に置き換えられてしまう。データそのものがすぐに消えるわけではないんですが、復元の難易度がぐっと上がります。だから、案内が出ても無視して閉じる。それだけでいいです。
あと、「とりあえずチェックディスク(chkdsk)を実行してみよう」というのもやめてください。これ、サポート経験の中で一番多い失敗パターンなんです。chkdskはファイルシステムを「修復」しようとするコマンドなので、壊れ方によっては元のデータ配置を上書きしてしまい、復元ソフトでも拾えなくなることがあります。良かれと思ってやったチェックディスクで状況を悪化させたケース、正直何件も見てきました。
RAW表示の原因は「論理」か「物理」かで対応が全然違う
ここで一度立ち止まってほしいんですが、そのHDD、カチカチ音や普段と違う異音はしていませんか。電源を入れた瞬間に焼けたような匂いがしたり、水没させた直後だったりしませんか。
もしそうなら、この先の自分で試す手順は読み飛ばしてもらって構いません。物理的な故障が疑われる場合、通電を続けること自体がリスクです。中の円盤や磁気ヘッドが傷ついている状態で無理に読み書きを繰り返すと、復元できたはずのデータまで読み取れなくなることがあります。異音がある時点で、これは業者案件だと僕は判断しています。詳しくはHDDのカチカチ音は物理障害。やってはいけないこと3つと正しい初動にも書いたんですが、音が出ているHDDに自分でソフトを走らせるのは正直おすすめしません。
一方で、異音もなく、急にRAWになっただけ、電源の抜き差しで発生した、Windowsの強制終了の後だった、というケースなら論理障害の可能性が高い。この場合は自分で試す価値があります。
フォーマットせずに中身を確認する手順
論理障害っぽいと判断できたら、まずやることは「そのドライブに新しく書き込まない」ことです。RAWになったHDDに直接ファイルを保存したり、復元ソフトをそのドライブにインストールしたりするのは避けてください。復元ソフト自体は別のPC、または同じPCでも別のドライブ(Cドライブなど)にインストールします。
僕がよく勧めているのは、まず無料のデータ復元ソフトでスキャンをかけて、ファイルが「見える」かどうかを確認することです。有名どころだとRecuvaやEaseUS Data Recovery Wizardの無料版などがありますが、無料版は復元できる容量に上限があることが多いので、まずはスキャン結果でファイル名やフォルダ構造がちゃんと表示されるかを見てください。ここで見えるなら、まだ望みはあります。
手順としては、こんな感じです。
- 復元ソフトを別のドライブにインストールする(RAW表示のドライブには入れない)
- 対象ドライブを指定してディープスキャン(全体スキャン)をかける
- スキャンには時間がかかります。HDDの容量にもよりますが、1TBだと数時間かかることも珍しくありません。途中で止めずに待つ
スキャンが終わってファイルが一覧に出てきたら、復元先は「絶対に元のRAWドライブ以外」にしてください。別の外付けHDDやPC内蔵の別ドライブに保存する。同じドライブに戻すと、上書きで他のデータを潰してしまう可能性があります。
ここで正直に言っておくと、無料ソフトで全部きれいに戻るケースもあれば、フォルダ構造がぐちゃぐちゃになって、ファイル名が「file001.jpg」みたいな連番に変わってしまうケースもあります。写真や動画は中身を見れば判別できますが、Excelファイルなんかは開いてみないと中身が分からないので、地味に時間がかかる作業になります。
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どれくらいの確率で戻るのか、正直なところ
「フォーマットしなければ必ず戻りますか」と聞かれることがよくあるんですが、これは僕も断言できません。RAWになってからどれだけ時間が経っているか、その間にそのドライブへの書き込みがあったか、HDD自体の劣化がどの程度進んでいるかで、成功率は本当にケースバイケースです。
僕が見てきた範囲で言うと、RAW化に気づいてすぐ通電をやめ、フォーマットもchkdskもしなかった場合は、無料ソフトでもかなりの割合でファイルが見えてきます。逆に、RAW表示のまま何日も使い続けたり、別のソフトで何度も修復を試みた後だったりすると、無料ソフトでは歯が立たないことが増えます。
このあたりの自分でできる範囲と、切り上げるべきタイミングについてはデータ復旧が自分でできる範囲と限界、業者に切り替える基準にもう少し詳しく書きました。
無料ソフトで見えなかった、あるいは重要な仕事のデータだった場合
スキャンをかけてもファイルが全く表示されない、フォルダ構造が壊れすぎて何がなんだか分からない、あるいは無料版の容量制限に引っかかって全部は救い出せない。こういう時に初めて業者を検討する段階だと思っています。
料金は業者や状態によってかなり幅がありますが、論理障害での復旧なら3万円〜8万円くらい、物理障害が絡むと10万円を超えることも珍しくないと言われています。ここは本当に「見てもらわないと分からない」部分が大きいので、無料診断・無料見積もりをやっている業者にまず相談して、金額に納得できるかどうかで決めるのがいいと思います。見積もりの見方についてはデータ復旧の料金相場と高い理由、見積もりで見るべき点にまとめてあるので、見積書をもらった後に照らし合わせてみてください。
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一つだけ注意してほしいのが、無料ソフトで一度スキャンをかけた後に業者に依頼する場合、そのスキャン自体はドライブに書き込みをしないので基本的に問題ないんですが、「復元を試みてファイルを保存した」履歴があるかどうかは業者に正直に伝えてください。何をどこまで自分で触ったかを隠すと、診断の判断材料が減ってしまいます。
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今夜、何をするか
異音がなければ、まずフォーマットのボタンを閉じて、別のPCかドライブに無料の復元ソフトを入れてスキャンをかけてみる。それだけで十分です。今夜中に全部を解決しようとしなくていい。スキャンには時間がかかるので、寝る前に走らせて朝結果を見る、くらいの気持ちで構えた方がいいと僕は思います。焦って何度もソフトを変えて試すより、一度落ち着いて一つのソフトの結果をちゃんと確認する方が、結局は近道になることが多いです。
症状が違うなら、こちらを読む
自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態
症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。
自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)
- 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
- 焦げ臭くない。煙は出ていない
- 水に濡れていない。落下させていない
- 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)
今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)
- カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
- 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
- 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
- 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
- RAID/NASでリビルドに失敗した
この状態でやってはいけない操作
- 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
- chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
- 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること
復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。
判断のもとにしている公的な情報源
このサイトについて
この記事を書いた人
真壁
データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年
メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。
