データ復旧業者に出すと中身見られる?情報漏洩の実際

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深夜に外付けHDDの電源ランプが点かなくなって、業者に出そうかどうか検索窓を開いた人向けに書く。たぶん今、頭の中は二つに分かれているはずだ。データを取り戻したい気持ちと、あのフォルダの中身を他人に見られるのは絶対に嫌だという気持ち。取引先の契約書だったり、家族の写真だったり、人によっては誰にも見せていないチャットのスクショだったりする。どちらも本気で困っているから、この二つが同時に成り立たない気がして検索している。僕もサポート窓口時代、この質問を電話で一番多く受けた。「業者に送ったら、中の写真とか全部見られるんですか」と。

ちなみに、電源ランプが点かないという症状は物理的な故障のサインでもある。この記事を読みながら何度も電源を入れ直したり分解したりするのは、状態を悪化させるだけなのでやめておいてほしい。まずは通電を止めて、落ち着いて先を読んでもらえたらと思う。

先に僕の答えを書く。基本的には業者は中身のファイルの内容そのものを見る必要がないし、見ないのが原則。ただし「絶対にゼロ」とは言えない。工程のどこかでファイル名やフォルダ名がたまたま目に入ることはあるし、業者によって作業の透明性にも差がある。ここを「絶対安全です」と言い切る記事もあれば「見られる可能性はあります」とだけ書いて終わる記事もあって、どっちも半分正しくて半分不親切だと僕は思っている。だからこの記事では、工程ごとに「見える/見えない」を分けて、あとNDAと立会いという、実はあまり書かれていない部分まで踏み込む。

なぜ「中身を見なくても復旧できる」のか

データ復旧の作業というのは、写真を眺めたり文書を読んだりする作業ではない。ディスク上に並んでいる0と1のデータ、いわゆるバイナリの並びとして扱って、そのファイル構造がどこで壊れているかをチェックする作業になる。よく使われる比喩だけど、医者が健康診断で患者の身体を診るのと似ている。医者は患者の人格や人生を見ているわけじゃなく、臓器や血液の状態を見ている。データ復旧エンジニアも、ファイルの「意味」ではなく「構造の健全性」を見ている、というのが業界側の説明だ。

これは技術的にも自然な話で、数百GB〜数TBのデータを一つずつ開いて内容を確認するなんて、時間的にも現実的じゃない。ソフトウェアで自動的にファイルシステムを解析して、壊れた部分を再構築する。人間が「開いて読む」工程は基本的に発生しない。

ただ、この「基本的には」という言葉がすごく大事で、ここに例外が乗ってくる。

工程別に見ていく。診断→復旧→納品でどこまで見えるか

診断の段階では、ディスクの物理状態やパーティション情報、ファイルシステムのエラー箇所を確認する。ここでファイルの内容が表示されることはまずない。壊れている場所を特定するだけ。

復旧作業の段階になると、壊れたファイルシステムからファイルを一つずつ拾い出していく。この時に、ファイル名やフォルダ名がエンジニアの目に触れる可能性は出てくる。「契約書_A社_2024.xlsx」とか「家族旅行_沖縄」みたいなフォルダ名は、復旧の進行状況を確認する画面に一覧として表示されるからだ。ここは正直に言うと、完全に見えないようにするのは技術的に難しい。ファイル名まで隠して復旧するというのは現実的にほぼ不可能だと僕は思う。

納品の段階では、業者によっては「正しく復旧されているか」を依頼者自身が確認できるように、復旧データの一覧やサムネイルを見せてくる場合がある。これは業者が勝手に見ているのではなく、依頼者が中身を検証するための工程だ。ただ、この確認作業をどの担当者がどこまで見ているかは業者ごとに運用が違うので、気になるなら「納品確認は誰が行いますか」と事前に聞いていい。聞いて嫌な反応をする業者なら、それだけで判断材料になる。

要するに、ファイルの「内容」まで読まれる場面はほぼないけど、「ファイル名・フォルダ名」は工程上どうしても目に入りうる、というのが一番正確な言い方だと思う。これをどこの記事も「見られない」か「見られる」のどちらかに寄せて書いているから、読んでいて余計に不安になるんじゃないかと僕は感じている。

秘密保持契約(NDA)は個人でも結べるのか

法人での依頼だと秘密保持契約(NDA)を締結できる業者は複数ある。取引先資料や顧客データを預ける場合、契約書を別途用意してくれる業者もあるので、法人担当者なら遠慮なく「NDA締結できますか」と聞いていい。

個人の場合はどうかというと、正直ここは業者によって対応がバラバラで、公式サイトに明記されていないことが多い。「個人でもNDAを結べますか」と聞かれて嫌がる業者はまずいないはずなので、不安が強いなら見積もり相談の時点で確認してしまうのが一番早い。追加費用が発生するのか、書面のやり取りにどれくらい時間がかかるのかも、この時に一緒に聞いておくといい。

見積もりのやり取り自体が不安な人は、データ復旧の見積もり断り方、診断後の返却はどうなる?も先に読んでおくと、断りづらさへの心理的なハードルが下がると思う。

作業を立ち会って見学できるのか

これ、意外と検索しても出てこない情報なんだけど、結論としては「業者による」というのが実情だ。作業拠点そのものを一般公開している業者は少なくて、クリーンルームやセキュリティルームは入退室管理がされている施設なので、部外者が中に入って作業を見学するというのは基本的に想定されていない。

ただ、依頼者が持ち込みで来店した際に、受付での説明や、症状の確認作業の一部を見せてもらえるケースはある。「作業風景を見せてもらえますか」と聞いてみて、施設の管理体制について説明してくれる業者かどうかは、それ自体が誠実さのバロメーターになると僕は思っている。逆に「企業秘密です」の一点張りで質問自体を嫌がるようなら、少し距離を置いて別の業者にも相談してみたほうがいい。

参考までに、富士通のFMVサポートでは、自社グループ内のセキュリティルーム・クリーンルームで作業を行い他社への委託はしないこと、入退室をIDカードで24時間管理・記録していること、監視カメラを設置していることを公開している。ここまで具体的に物理セキュリティを説明している業者は実はそう多くない。逆に言えば、こうした情報を公式サイトに明記しているかどうかは、業者を見る一つの目安になる。

セキュリティ認証で何がわかるか、比較してみる

「ISO27001」や「プライバシーマーク」という言葉を見たことがあると思うけど、この二つは意味が違う。プライバシーマークは個人情報の取り扱いに特化した認証で、ISO27001(ISMS)は個人情報だけでなく情報資産全体の管理体制を評価する国際規格になる。どちらを持っているかで、その業者が何を重視して体制を作っているかがなんとなく見えてくる。

僕が調べた範囲で、認証や体制について公開している業者を並べてみる。

業者名 実績 復旧期間の目安 公開されているセキュリティ関連の情報
アドバンスデザイン 実績20年程度 1〜3営業日 ISO9001、ISO27001
AOSデータ復旧サービスセンター 実績20年程度 即日〜2日 ISMS(ISO/IEC 27001:2013)、室内に防犯カメラ設置
A1データ(エーワンデータ) 実績80,000件以上とされる 即日〜2日 ISO27001、ISMS、機密保持契約の用意あり
データサルベージ 実績4,600件以上とされる 即日〜2日 ISO27001
PCエコ 実績40,000件以上とされる 最短3営業日 ISO27001、ISMS、プライバシーマーク認定、SECOM連携
データレスキューセンター 要確認 要確認 プライバシーマーク認定、法人向け秘密保持契約の締結可
デジタルデータリカバリー 相談実績50万件超とされる 要確認 初期診断は完全無料、24時間365日受付

料金の具体的な数値はどの業者も公式サイトで非公開扱いになっていることが多く、この記事でも実額は書けない。表内の実績件数や復旧期間、認証情報についても、2026年時点で各社の公式サイトと比較記事を確認した範囲の情報にすぎず、実際には変更されている可能性がある。依頼前には必ず最新の内容を公式サイトか無料見積もりで確認してほしい。料金の仕組み自体についてもう少し知りたいなら、データ復旧の料金相場と高い理由、見積もりで見るべき点にまとめてある。

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違法なデータが見つかったらどうなるのか

これは聞きたくない話だと思うけど、正直に書く。復旧の過程でファイル名から違法なデータだと判断された場合、契約解除や、最悪の場合は通報という対応が取られることがある。児童ポルノに該当するようなデータは所持しているだけでも違法とされていて、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という規定があると言われている。自分には関係ないと思っていても、家族共用のPCや譲渡されたHDDを預ける場合は、こういうリスクがゼロではないことは知っておいたほうがいい。

悪徳業者に当たらないための見分け方

不安を煽る営業トークをしてくる業者、たとえば「今すぐ電源を切らないと完全に壊れます」と過度に急かしてきたり、「復旧率99%」のような根拠の薄い数字を前面に出してくる業者は、僕の経験上は少し距離を置いたほうがいい。実績件数や認証を公開していない、会社の実体がよくわからないところに大事なデータを預けるのはリスクが高い。

見分け方としては、認証(ISO27001、プライバシーマークなど)を公開しているか、実績件数や事業年数を具体的に出しているか、見積もり前に高圧的な営業をしてこないか、この辺りを最低限チェックするといい。業者選びの基準をもう少し詳しく知りたい人はデータ復旧業者の選び方、高額請求トラブルを避ける見積もりの見方も読んでおくと安心材料になると思う。

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自分でソフトを使って復旧する道もある

「業者に預けるのがどうしても怖い」という人向けに、無料の復旧ソフトを自分のPCで試すという選択肢もある。これは他人に一切データを見せずに済むという意味では安心感がある。ただ正直に言うと、物理的に壊れているディスク(カチカチ異音がする、水没した、焦げ臭いなど)に対してソフトを使うと、状態を悪化させて本来なら復旧できたはずのデータまで失うことがある。論理障害(誤って削除した、フォーマットしてしまった)であれば自分で試す余地はあるけど、物理障害の疑いがあるなら、その時点で通電を止めて業者の無料診断に相談したほうが結果的に安全なことが多い。成功率はケースによってかなり差があるので、そこは過度に期待せずに見てほしい。

自分でどこまで試していいのか判断に迷うなら、データ復旧が自分でできる範囲と限界、業者に切り替える基準に僕なりの線引きを書いてある。ここで無理に自分で進めてしまって、あとから「もう手遅れでした」と電話がかかってくることが窓口時代に何度もあったので、判断に迷う段階では一度立ち止まってほしい。

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結局、預ける前に何を確認すればいいか

ここまで読んで、結局自分は何を聞けばいいんだっけ、と思っているかもしれないので整理しておく。NDAを個人でも結べるか、追加費用や締結までの時間はどれくらいか、作業拠点はどこで管理体制はどうなっているか、納品時の確認作業は誰がどこまで見るのか。この辺りを見積もり相談の電話やメールで聞いてみて、答え方が誠実かどうかで、その業者に預けるかどうかを判断すればいいと思う。

見られたくない気持ちは、恥ずかしいことでもおかしなことでもない。プライベートな写真や取引先の資料を他人に預けるのは、本来なら誰でも抵抗があって当然のことだ。その気持ちを無理に押し殺して預ける必要はなくて、聞きたいことは全部聞いてから決めればいい。今夜できることは、まずディスクの電源を入れっぱなしにしないこと、そして気になっている業者一社に、NDAと作業拠点について一本メールか電話を入れてみることだと思う。それだけで、預けるかどうかの判断はだいぶ楽になるはずだ。

症状が違うなら、こちらを読む

自分で試していい状態と、今すぐ手を止める状態

症状が違えば初動も違う。以下は全記事共通の線引きである。迷ったら通電を止める側を選ぶ。

自分で試してよい(下の全てに当てはまる場合のみ)

  • 異音がしない。カチカチ・ジジジ・カラカラいずれも鳴っていない
  • 焦げ臭くない。煙は出ていない
  • 水に濡れていない。落下させていない
  • 機器自体はパソコンから見えている(認識はする)

今すぐ電源を切り、通電をやめる(一つでも当てはまるなら)

  • カチカチ・ジジジ・カラカラなどの異音がする
  • 焦げ臭い。煙が出た。基板が変色している
  • 水没した。湿っている(乾かす目的でも通電しない)
  • 落下・衝撃のあとに認識しなくなった
  • RAID/NASでリビルドに失敗した

この状態でやってはいけない操作

  • 再起動と抜き差しの繰り返し。通電のたびに状態は悪くなる
  • chkdsk・フォーマット・修復ツールの実行
  • 元の機器への上書き保存・復元先に元の機器を指定すること

復旧の可否は状態次第であり、可否も費用も診断しないと分からない。ここで保証はしない。

判断のもとにしている公的な情報源

このサイトについて

この記事を書いた人

真壁

データ復旧たすけ隊編集長 / 元フィールドエンジニア25年

メーカーのフィールドエンジニアを25年。工場や病院のサーバ室で、止まった機械と青ざめた担当者を前にしてきた。現場で学んだのは一つ。壊れた機械より、慌てた人間の操作のほうがデータを殺す。再起動、抜き差し、通電したままの放置。良かれと思ってやる操作で、戻ったはずのデータが戻らなくなる。だからここでは、理由より先に「今すぐやめること」を書く。復旧の保証はしない。悪化させない手順だけは断定する。

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